アンテナを高く
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
前回も書きましたが、精度のいい高いアンテナをつねに張り巡らせ続けてください。
そうすれば役に立つ情報も入ってきます。
でもあまりにも情報量が多いと、消化をするのも大変です。
何点かにポイントを絞っていく力も大切です。
それが本当の実力なのです。
とりあえず自分の引き出しにたくさんのテーマをしまっておいてください。
現代はまさに混沌そのものです。
どのようなテーマの問題が出るかわかりません。
誰にも見当がつかないのです。
しかしそうはいっても黙って何もしないわけにはいきません。
とにかくアンテナを高く張り続けてください。
本を読む、新聞を読む。
この習慣なしにいい論文は書けません。
課題は本当にいくらでもあります。
自分の意見をその全てにおいて持てというのは大変なことです。
参考になる本を一冊だけ紹介しておきます。
『日本の論点』です。
毎年、出版されています。
ですから正確にいえば、『何年版・日本の論点』ということになります。
そこに日本が今日抱える代表的なテーマが載っています。
書店で立ち読みするだけでもいいです。
それだけで、アンテナは随分高くなります。
こういう地道な作業を毎日続けていくということ。
それが小論文を育てる脳を作るということなのです。
少しずつでいいです。
続けてください。
必ずうまくなりますから。
課題文が最大のヒント
さて具体的に問題を考えてみましょう。
通常、テーマにそった課題文が出題されます。
長いのはA4の用紙に2枚くらいびっしりと。
短くてもA4の半分くらいはあります。
とにかくじっくりとよく読んでください。
しばらく考えてみましょう。
いろんなことを思い浮かべてみます。
でも言葉が出てこない。
グローバルなこの時代。
国際化が大切なことぐらいは誰にでもわかります。
でもそれをどうやって小論文にまとめればいいんでしょう。
なんにもいいアイデアなんて出てこない。
いい意見なんて思い浮かばないよ。
そういう人がほとんどじゃないでしょうか。
なぜ書けないんだろう。
やっぱりアンテナが低いから。
わたしは本も読まないし、新聞もテレビ欄しか見ない。
小論文は諦めようかな。
ちょっと待ってください。
以前にも書きました。
小論文に一般論はいりません。
「私」を前面に出すのです。
考えがあって言葉がでてくるのではありません。
キーワードを探す
国際化に関係する言葉とは何か。
自分の周囲で具体的に関連することがらはありませんか。
アルバイト先にやってきた外国人の留学生。
学校にいた外国籍の生徒。
繁華街でみる外国人の姿。
アジアン・フード・レストランに行った時の感想。
突然外国人に道を聞かれた時のこと。
たくさんの情景や質問を頭の中に浮かべてください。
身近なことでいいんです。
難しいことを考えようとしても、言葉は急に浮かびません。
それよりもっと身近なことを。
まず自分の周囲をじっくりと見まわす。
それから何が書けるのかを探します。
慌てなくて大丈夫です。
国際化と言われて、最初に思いつくのはなんでしょう。
英語や中国語が話せること。
確かにそれも大切です。
あるいは、スマホの普及です。
日本にいながら、インターネットや電話で、リアルタイムに商談ができる時代になりました。
ここは日本だからといって、イエスとノーをはっきりと言わないなどという商習慣は消えつつあります。
高齢化とともに労働力も外国に頼っています。
もう国境はありません。
少し前は韓国、中国、やがてベトナム、インドネシア、ミャンマー。
さてこれからは…。
日本の果たす役割はどうなるのか。
農業の働き手も足りません。
しかしグローバルスタンダードを無視して、労働者を求めるわけにはいきません。
さらにもっと大事なことがたくさんあるんじゃありませんか。
言葉をまず思い浮かべましょう。
それにあわせてイメージを膨らませる。
この繰り返しです。
できることと、できないこと
できるというのは、どういうことか。
反対にできないのはなぜか。
それらの項目を必死に考えていくうちに、自分にとって守るべき大切なことが見えてきます。
ここまでくると、かなり書く内容も絞られてくるのではないでしょうか。
もう一度ここで最初に戻りましょう。
なぜ国際化が必要なのか。
これが原点です。
誰にとってのメリットなのか。
結論は簡潔に。
しかし一般論を羅列してはいけません。
国際化ということがらに対してなんにも言葉が浮かばなかったのはなぜか。
それを他人事として考えていたからです。
自分の周囲に起こったこととして考えられませんか。
たとえば、見たこともない外国人が隣に引っ越してきた。
話している言葉もよくわからない。
毎日、聞いたことのない音楽をかけている。
決まった日にゴミを出さない。
さあ、どうしましょう。
ここから考えるのです。
グローバルスタンダードとは何か。
そうでなくても「なぜ国際化が必要なのか」
「具体的に国際化を行っていくためにはどうしたらいいのか」
この順番で一つずつ問題を掘りさげていくのです。
さらに外国人が入ってきた時のメリット、デメリットを考えましょう。
メリット
日本人の視野が広がる。
交易が増せば利益が出る。
デメリット
価値観が違うことでトラブルが発生する怖れがある。
産業が空洞化する。
いよいよ結論です。
賛成か反対か
こういうテーマはほぼ賛成論に傾きがちです。
しかしそれだけでは少しインパクトが足りないかもしれません
確かにこの部分は賛成だが、しかしよく考えると、反対せざるを得ない場面も多くある。
このような部分否定、部分肯定の書き方もあります。
部分賛成派
外国人の流入は今後も避けられない。彼らと良好な関係をとりながら、互いにウィンウィンの成果を出す努力をしなければならない、としたら。
部分反対派
外国人の流入は避けられないとしても、職種を限定すべきである、とするか。
一つの例
医師のような特殊な技術、知識を必要とする職業にまでその枠を広げ、外国人を受け入れることになると、その供給システムにまで大きな影響をあたえかねない。
などと、特殊な角度からも文章は書けます。
自分ならどの視点から書くのが一番しっくりくるか、じっくり考えること。
ここが正念場です。
とにかく一度書いてみてください。
多くの場合 制限時間 1時間 制限字数 600字~1200字。
正味9割は原稿用紙をなんとしても埋めなければいけません。
今回も最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。