【蜜蜂と遠雷】ピアノ好きなら読まなければ後悔する小説はこれ!

直木賞と本屋大賞

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、ブロガーのすい喬です。

売れてますね。

文庫本になってから、ますます出足がいいようです。

やはり単行本ではあまりに厚くて、それに重いですしね

最後までたどりつかない読者も多いようです。

しかし読み終わると、なんともすがすがしい気持ちにさせられます。

誰が優勝するのかなんて、どうでもよくなる。

登場人物はみんないい人です。

本当にいい人ばかり。

人間にはもっと暗い面がたくさんあると思うけど、それが出てこない。
なぜか。

きっとピアノという楽器が俗悪な魂を奪ってしまうのかもしれません。

著者恩田陸はこの小説で、2017年、直木賞と本屋大賞をダブル受賞しました

とにかく言葉が美しい。

本当のところ、音楽を言葉に表現するくらい難しいことはありません。

この作品を書くために随分と時間がかかったようです。

そのことは著者とずっとつきあった幻冬舎の担当が、文庫本の後書きで書いています。

舞台になった浜松国際ピアノコンクールに何度も通い詰めたとか。

予選からずっとです。

音楽 photo

彼女はこの小説を執筆するにあたり、2006年の第6回大会から、ほぼ全参加者の演奏を聴きました。

執筆が終わっていた第10回大会においても演奏を聴き続けたのです

ほとんど修験者の荒行のようです。

この大会は第1回大会が1991年に開催されました

Bitly

浜松の市制80周年を記念して始められたそうです。

なんといっても浜松は日本における楽器製造の歴史を背負ってます。

今や、国際ピアノコンクールとしても大変に有名なイベントになりつつあるのです。

4人の登場人物

自宅に楽器を持っていないという養蜂家を父に持つ少年、風間塵

かつて天才少女としてデビューしながら母の死以来、全く弾けなくなった、栄伝亜夜

優勝候補の世界的な天才ピアニスト、マサル・カルロス

彼はかつて栄伝亜夜にピアノを教えてもらったことがあるという設定になっています。

楽器店勤務のサラリーマン、高島明石

メインの登場人物はこの4人です。

もう少し詳しく横顔をみていきましょう。

風間塵

16歳です。

自宅にはピアノすらありません。

父親が養蜂業をしており、フランスで採蜜の移動の旅をしつつ暮らしました。

ピアノの大家のホフマンに見いだされ師事します。

彼が亡くなる前の計らいで、現在、パリ国立高等音楽院特別聴講生となっています。

「蜜蜂王子」と呼ばれ、天才的な耳の良さを誇っています。

わずかにピアノの位置をずらし、調律師に的確な指示を与えます。

栄伝亜夜

20歳です。

天才少女としてコンサートを開きCDデビュー。

13歳のとき母が亡くなり、その後ショックでピアノが弾けなくなります。

そのまま音楽界から離れたものの、音楽大学のとある学長に再度見出されます。

少女時代、近所のマー君(マサル)に、彼が引っ越すまでピアノの手ほどきをしたことがありました。

自信を失っていた彼女が、演奏のたびごとに自分を取り戻していくシーンが劇的に描かれていきます。

マサル・カルロス・レヴィ・アナトール

19歳です。

日系三世のペルー人の母とフランス人の父を持っています。

優勝候補の一番手です。

フランスから渡米しジュリアード音楽院に在学中。

少年時代に日本に一時在住し、まだ容姿が目立たないころに、亜夜が通うピアノ教室に、一緒に連れられていきます。

高島明石

28歳です。

音楽大学出身。

かつては国内有数のコンクールで実績も積んでいます。

卒業後は音楽界には進まず、現在は楽器店勤務のサラリーマン。

しかし家には防音室を備え、ピアノをやめることはありませんでした。

生活者の音楽を目指して、コンクールにエントリーをしました。

小説では浜松国際ピアノコンクールではなく、芳ヶ江国際ピアノコンクールと名をかえています。

もう一方の主役は3人の審査員です。

伝説的なピアノ奏者ホフマンに師事したという風間塵の登場で彼らの音楽観をものすごく揺さぶります。

凡庸な演奏を聞き飽きていた彼らにとって、亡霊のようなホフマンの存在が瞬く間に蘇るので

3人の横顔もそれぞれに読み応えがあります。

ピアニスト牛田智大

この小説を手にとろうとしたのは、NHKでコンクールを取材した番組を見たのがきっかけでした。

音楽 photo

実際にコンクールで2位に入ったピアニスト牛田智大の映像が、読んでいる間にもたえずフラッシュバックされ続けたのです。

彼もかつてはピアノ王子と呼ばれ、亡くなった中村紘子に大変大事にされた経歴をもっています。

彼はこの4人のそれぞれにどう仮託されたのでしょうか。

放送で耳にしただけですが、当日の最終選抜、第3次予選に選ばれた際の曲です。
ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番。
とても自然でした。

やっぱり名曲ですね。

作者はこの作品を通じて、何を訴えたかったのでしょうか。

それを考えることが、この小説へのオマージュになると思います。

一つ言えることは、天才は神の領域に宿るということです。

さらに続けられる意思を持てる人。

それを業として生きていく人です。

誰にもとめられない道を孤独に生きていく覚悟を持てる人こそが、天才と呼ばれるのではないでしょうか。

映画化、封切り

この作品は2019年10月に映画化され、封切られました。

監督 脚本 石川慶
松岡茉優 栄伝亜夜
松坂桃李 高島明石
森崎ウィン マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
鈴鹿央士 風間塵

音楽がとにかくすばらしいと高い評価を得ています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

恩田陸
1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』でデビュー。2005年「夜のピクニック」で吉川英治文学新人賞と本屋大賞、06年「ユージニア」で日本推理作家協会賞、07年「中庭の出来事」で山本周五郎賞、17年「蜜蜂と遠雷」で直木三十五賞と本屋大賞を受賞 。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました