鈴本からの生配信
みなさん、こんにちは。
アマチュア落語家、すい喬です。
6月に入って、寄席好きにはたまらない週末が続いています。
毎週、上野広小路にある鈴本演芸場から寄席の生配信がYoutubeを使って送られてくるのです。
時間も半端じゃありません。
普段の興行と全く同じ時間帯なのです。
すごいですよ。
午後の部 13時~16時半
夜の部 17時半~9時
約3時間半ずつの長丁場です。
いつもと違うのは無観客だということくらいでしょうか。
登場する芸人もその日の予定通りです。
おそらくこういう形の生配信は本邦初だと思います。
もちろん落語家個人で動画配信をやっている人は何人かいます。
春風亭一之輔とか古今亭菊之丞とか。
菊之丞師匠は池袋演芸場、鈴本演芸場などから配信をして、落語ファンを喜ばせてくれています。
ご本人もずっと家でじっとしていたようですが、この配信を契機にすっかり元気になられたようです。
お客様が誰もいないと噺の間が変わるだろうとは随分いわれていました。
しかしある程度の芸歴があると、そこにお客の姿が見えるようですね。
最初はちょっととまどったものの、回数を増すごとに自然体に戻ってきたような気がします。
さらにありがたいことにはアーカイブとして残してくれていますので、いつでも見られるということです。
もちろん期限はあります。
今ならばまだ見られますので、是非覗いてみてはいかかでしょうか。
鈴本の落語は他の寄席よりも1人あたりの持ち時間が少し長いのです。
それだけにじっくりと噺を聴けて楽しいです。
6月20日の昼と夜は真打昇進襲名披露興行も予定されています。
なんといっても先輩落語家が見守ってくれる中での披露口上は見ものです。
笑いの取り方もお祝いの席にふさわしいものです。
普通、芸人同士は互いの落語を正面から見るなどということは許されません。
それが今回は、本当に1番いい席に陣取ってゆっくりみせてもらえるのです。
過去の高座ではなく、たった今の最新のものだということがポイントなのです。
三味線の音
今回の配信には落語のほかにさまざまな色物の芸人さんが出ています。
寄席ならばあたりまえですが、やはり自宅で色物が見られるというのはなによりです。
太神楽、マジック、紙切り、ものまね、漫才などなど…。
さらに粋曲、柳家小菊、三味線漫談、林家あずみ、浮世節、立花家橘之助などです。
一番のベテランは小菊さんで今回はいくつもの都都逸の他に「両国風景」を聞かせてくれました。
この曲は何度聞いても楽しいですね。
江戸の名物、両国の花火。
橋の風景を三味線にのせて語ってもらうと、それだけで気分がワープしてしまいます。
先代円歌の弟子だった小円歌さんも名前を橘之助とかえました。
彼女の両国風景は鉄火肌の姉御ですかね。
小菊さんとの違いがよくわかります。
どちらも味わい深いです。
やはり寄席には三味線がなくてはいけません。
この楽器の音色はなんというのでしょう。
独特の味わいがあります。
ぼくは子供のころから聞いているので、やっばり好きなんです。
早口言葉を上手に使いながら、囃し立てるように進むと、実にいい気持になります。
必死で書き取りました。
ちょっと曖昧なところもあります。
違っていたらご教示ください。
この文句を是非覚えたいですね。
きっとなにかの役に立ちます。
芸は身を助けると言いますのでね。
両国風景
両国の夕涼み 軒を並べし茶屋の数 団扇店 揚弓場 その他あまたの諸商人。
川の中ではテケテン馬鹿囃子 ウロウロ舟に影芝居 屋形屋根船ある中で…。
「さぁーい、いかだだ、いかだだ、いかだだ、いかだだ、いかだだぁ、面舵」
おや来なんせな、来なんせな、来なんせ来なんせ黄粉餅、お望みならば幾代餅、浅草市の売り物は、そりゃ、ざっきに塵取貝杓子、トロロ昆布に伊勢海老か、そりゃ市や負けたぃ桶負けたーい。
笹に差したるあの面は、お福のお面と申します。
アフリコ鉄灸に金火鉢、さわらの手桶は軽かった。
山椒のすりこ木こいつぁ重い、張子の松茸おお軽い、今日は歩いてくたびれた。
昼の支度はどこじゃいな。
半屋か花屋か万年屋。
並木町をばずっと過ぎ、駒形堂から舟にしよう。
そら一番掘から二番掘、三番堀から首尾の松、向こうに掛けたるあの橋は、下総武蔵の
国境、九重六軒掛け渡す、両国橋とはあれかいな。
橋のたもとはなんじゃいな。
婆さんツルツルやっちょるね、八文で海老釣った鯛釣った。
辻占お豆が一籠や、ずらりと並んだ茶屋女、そりゃ向こうのたもとはなんじゃいな。
鳥鍋玩具に山鯨、おやまたその隣の見世物はやれ突けじゃがたら蛇使い。
おやまたその隣が鳥娘、親は代々狩人で、親の因果が子に報い、八文じゃ安いもんじゃ見ていきな。
そら向こうを通る姉ちゃんは、島田くずしか銀杏がえし。
おや頬が赤くて福相だ、惚れるか惚れぬか聞いてみな。
聞いたら惚れぬと申します。やれやれなんて間が悪い。
これから茶尽くし移ります。
茶という文字の書き様は、はたちのお人のホと書いて、茶という文字に読みまする。
茶長掘の茶く人が、茶ま倉河岸から茶根船で、茶屋の茶ん梯子で茶っと着く。
茶屋の姉茶んが茶っと出て、あら茶ぁ茶ぁこちらと手を取って、茶屋の二階に茶がります。
お茶屋の姉茶んが茶まえだれ、茶かばこ盆びは茶かづき台、茶織芸者を茶と上げて、茶味線弾かせて茶わいだら、隣座敷の茶く人が、茶かましくって寝られない。
そりゃ、向こうのたもとはなんじゃいな、或いは巡礼古手買い。
そりゃ、一茶か茶釜に二茶釜、二茶か茶釜に三茶釜、三茶か茶釜に四茶釜、四茶か茶釜に五茶釜、五茶か茶釜に六茶釜、六茶か茶釜に七茶釜、七茶か茶釜に八茶釜、八茶か茶釜に九茶釜、それ九茶か茶釜に十茶釜、おらのとっ茶ん爺茶んだ。
これを返して言おうなら、十茶か茶釜に九茶釜、九茶か茶釜に八茶釜、八茶か茶釜に七茶釜、七茶か茶釜に六茶釜、六茶か茶釜に五茶釜、五茶か茶釜に四茶釜、四茶か茶釜に三茶釜、三茶か茶釜に二茶釜、二茶か茶釜に一茶釜。
「さぁ!上がった上がった上がった上がったい!玉屋~!」
橋の上には数万の人の声、虫売り麦売りに西瓜の立ち食い。
本家烏丸枇杷葉湯。
言葉遊び
日本語は本当に言葉遊びに向いていますね。
途中に出てくる「茶」という音の響きだけを使ったところは実にうまくできています。
なんとなく現代のラップを連想させます。
実際の音源を聴いてみてください。
今回の配信でなくても小菊さん、橘之助さんと両国風景でググれば出てきます。
江戸時代の風景ですから、今となってはわからないものもありますが、その気になって調べていくと、楽しいのではないでしょうか。
小菊さんと橘之助さんの芸風の違いなどもあわせて聞いてみると、きっとまた別の面白さが出てくると思います。
あずみさんはまだ若いので、これからが楽しみですね。
かつては柳家三亀松、紫朝師匠などの男性が主でしたが、今は女性の方が俗曲、端唄などの世界では強いようです。
現在活躍中なのは、男性陣では紫文師匠でしょうか。
寄席の味わいは落語だけにあるのではありません。
色物のよさはなかなかのものです。
6月いっぱい、生配信が土日とあります。
無料ですので、是非覗いてみてください。
楽しみは探す気持ちになればあちこちにあるものです。
最後までお読みくださりありがとうございました。