新共通テストはもう目の前
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師のすい喬です。
今回は実施要項に未定の部分が多い新大学共通テストについて考えます。
現在、高校2年の受験生予備軍の生徒にとって、問題は深刻です。
2020年度の大学入試は、つい目の前まできています。
しかしいまだに決定していないことがたくさんあるのです。
国公立の大学はほぼこのテストに参加します。
しかし私立大学はその態度を明らかにしていないところが圧倒的です。
完全な様子見です。
他の学校が決めたら、その結果を見ながら考えようという心づもりのようです。
とにかく毎日の新聞に新共通テストの記事が出ない日はありません。
7月25日、全国高校長協会(5200校所属)の代表が文科省へ陳情に出かけました。
あまりにも未定のことがらが多く、その中でも特に英語の外部試験についてはほとんど何も決まっていない。
これでは受験生が混乱するだけだというのです。
外部試験の内容が正式に決まるまでは、実施を延長してもらいたいというものでした。
地域、経済格差を助長する
試験の詳細がわからず、不安を助長する
公平、公正な入試が現状では不可能である
高校長協会がこういう類いの要望を出すということは非情に珍しいのです。
それだけ高校段階での不安感が大きいということを証明しています。
特に離島の生徒が外部試験を受けるのは大変なことです。
移動費だけではありません。
受験料もばかにならないのです。
なかには2万円も3万円もするテストもあります。
これでは格差是正どころの騒ぎではないですね。
さらに8月30日の記事によれば、大学入試センターの委託を受けて、採点業務を行う事業者にベ
ネッセグルーブ傘下の学力評価研究機構が決まりました。
落札金額は61億6千万円。
同社はベネッセの100%子会社です。
思考力と表現力
今回の入試は学力の3要素がどれだけあるのかを判定するものだといわれています。
思考力、判断力、表現力
主体的に協働して学ぶ態度
この中でとくに2番目の内容に関しては国語、数学の記述式問題がメインです。
英語の話す力、書く力も重点的にみていきたいとしています。
これまでに2回試行した問題では、国語の場合はどんな問題だったのでしょうか。
架空の市が策定した「景観保護ガイドライン」や「駐車場の使用契約書」「生徒会の部活動規約」について。
数学では「緑地公園にたてる銅像の見えやすさ」を三角比の応用で考えさせるというものです。
いずれにしても文章化しながら、問題を解くというのが、今までの入試にはなかった点です。
さらには英語の外部試験です。
このことについては別のところに書きました。
ここに参考リンクを貼っておきます。
ちなみに過去2回の共通テスト試行問題の採点もベネッセが行いました。
しかしよく考えてみると、50万人が受験する試験の採点を私企業が1社で独占するというのはどう
いう意味を持つのでしょうか。
大学入試センターは試験を行うことによって質の高い採点者を集めるといっています。
しばらく前は学生まで採点にかり出さなければ足りないのではないかという話もありました。
文章問題を公平に50万人分、短期間に採点するとはどういうことか。
考えただけでも頭が痛くなります。
結局あまりにも評価問題の点数が悪かったため、数学だけは記述式問題を大幅に変更するそうです。
当初の予定とは違う数式などを記述する問題にすることにしました。
ベネッセの立場
ベネッセはGTECという名称で英語の外部試験への参加を表明しています。
よほど細心の注意をして臨まざるを得ないでしょう。
これから行うというプレテストの採点結果などを含めて、膨大なデータが私企業1社に集中します。
実際に試験を受ける側の生徒や、現場の教員の立場からみると、その分析結果の提供なども含め
て、模試や入試説明会への参加がどうしても必要となるに違いありません。
文科省は24年度以降、他教科の理科、社会などにも記述式試験を導入する予定にしています。
ベネッセは進研ゼミを展開している企業です。
今後どのような方向へ舵を切っていくのか、大変に注目されるところです。
実際に入試を受ける生徒は、どんな問題が出るのか、大変気になるでしょう。
国公立に進学したいとなれば、共通テストが必要になります。
その際、どこのどんな資料が一番正確なのか。
それが知りたくなります。
今後、ベネッセの立場はかなり複雑なものになると思われます。
事実上、この会社が日本の入学試験をリードしていくといっても過言ではありません。
現在、世界の情報のほとんどはGoogleが握っています。
そしてそのビッグデータの資料価値が途方もない富を生み出しています。
これと同じことが、共通テストを通じて起こるという危惧をどうしても覚えないわけにはいきません。
しかしこの会社が採点業務などから降りるとしても、別の企業がまた参入するにちがいありません。
現実に英語の外部試験では、最初に参加を表明していたTOEICが早々と離脱しました。
企業は社会参加の役割を担います。
同時に営利を目的にもします。
その間でどのような行動をとるのか。
消費者でもある受験生とその親の視線は格別に厳しいものがあるといわなければなりません。
推薦入試の変化
共通テストの実施は高校にもすでに大きく波及しています。
なにより、記述式に対するアレルギーをなくすこと。
これが最大のポイントです。
論理的な文章を書くという作業に高校生はあまり馴れていません。
入試段階で、ある程度鍛えなければならないという意識があるようです。
その変化が推薦入試に早速あらわれています。
2018年度の都立高校推薦入試では今まで作文を課していた学校が、かなり小論文にシフトしています。
富士、竹早、豊島、白鴎、上野、昭和などの高校が小論文に変わりました。
この変化はさらに2019年度も続くもの思われます。
今後、推薦入試においては小論文実施への移行があたりまえのことになるでしょう。
また現在の高校入試の英語ではリスニングだけにとどまっています。
しかしこれも「話すこと」を重視したスピーキングテストに移行せざるをえないでしょう。
事実、どのようにしたらうまくスピーキング能力を測れるのかといった観点から、民間の検定試験
実施団体と協議に入っているそうです。
今後ますますこの動きが加速することは間違いありません。
民間の業者は変化するときが、事業参入のチャンスです。
見逃すはずはありません。
高校3年の4月から12月までの間に2回の受験が可能とされる外部試験はすでにいくつかの団体で実
施概要が発表されています。
それによれば「英検1day S-CBT」第1回目(2020年4~7月実施)の予約申し込みは9月中旬から
おこなわれるとのこと。
まだ先の話だなんてのんびりしていると、とんでもないことになります。
どの大学を受験するかよりも、まずこの外部英語試験を受験するかどうかを先に決めなければなりません。
受験生の皆さんが想像しているより、かなり早いスピードで受験システムが変更されつつあるのです。
それも日々刻々と変化しているのです。
そんなことは全く知らなかったなどということは通用しません。
今からあらゆる情報を収集してください。
それが合格への近道になることは間違いありません。
最後までお読みいただきありがとうございました。