監視社会
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は社会の隅々に監視システムの溢れかえる現代の姿を論じます。
小論文を書き始めるとき、1番悩むのは文章をどうまとめたらいいのかということです。
さまざまなテーマについて論じなさいと言われても、そんなに容易なことではありません。
解答への糸口をどう探せばいいのか。
悩みますね。
まず最初に課題文で提起された問題の原因を探ってみてください。
背景に何があるのかをチェックしましょう。
理由は簡単です。
必ず原因があって結果があるからです。
できる限り底まで深く降りていかなければなりません。
しかし言うのは易く行うは難しです。
何を切り札にすればいいのかもよくわかりません。
慣れていないと、どこから切り込んでいいのか、皆目見当がつかないのです。
そんな時、本や新聞などで得た知識を引き出してみるという作業がどうしても必要になります。
これなしに合格できる小論文を書くことは無理ですね。
カギは知識を身につけておくことです。
その地味な作業の集大成として、合格答案が作成されるのです。
今回は「監視カメラ」について考えてみます。
2015年、新潟大学法学部の推薦入試に出た問題です。
テーマ型小論文
いわゆるテーマ型小論文と呼ばれているものです。
このタイプの問題には課題文がありません。
短文が提示されているだけです。
設問の内容は以下の通りです。
現在わが国でも、公道、銀行、コンビニエンス・ストアなど、いたるところにいわゆる「監視カメラ」が設置されている。
このような「監視カメラ」の設置について、そのメリットとデメリットを指摘した上で、あなたの考えを1000字以内で述べなさい。(制限時間120分)
この設問だけで1000字を書くというのですから、何の知識もなければ、全く歯が立ちません。
解答のポイントは「監視カメラ」を設置することのメリットとデメリットです。
それを指摘しろとあります。
この作業をしなければ、評価は当然のように下がります。
さらになぜここまで監視カメラが普及したのかという背景、原因が必須です。
それらを総合した上で、自分の考えを書くのです。
できそうですか。
メリット、デメリットを考えながら、なぜこのような社会になったのかを考察してください。
ヒントとして、1番最初に社会の変化をみることです。
以前、監視カメラは大都市の繁華街にありました。
それが今は近郊の都市はもちろん、地方の町や村にまで広がっています。
その理由はなにか。
犯罪がそれほどに増えてしまったのでしょうか。
想像をたくましくして考えることです。
そこから「世間」という言葉が導き出せれば、かなり合格への道のりが見えてきます。
メリットとデメリット
最初に監視カメラの功罪を論じます。
対立するポイントを最初にきちんと把握してください。
監視カメラのメリットをまず示します。
何が考えられますか。
カメラを設置した区域では当然違法行為や不適切な行動の減少が挙げられます。
多くの人間はカメラがあれば、当然、行動を自己規制をします。
よく銀行の入り口などで、「警官が立ち寄ります」などというポスターとあわせて、監視カメラ作動中の文字が掲げられているのを見かけます。
マナーに反する行為や違法な行為を行った瞬間がカメラに録画されていると思うと、抑制的な行動に出るものです。
かなりの効果があるでしょうね。
犯罪があったときの証拠にもなります。
最近では自動車にドライブレコーダーなどもごく当たり前に搭載されるようになりました。
以前では考えられませんでした。
もっぱら事故記録用として、重宝されています。
一方、デメリットとしてはいくつか考えられることがあります。
1つは情報管理の問題です。
安易に第三者に渡してしまったとき、個人情報が簡単に流出してしまいます。
プライバシーをネットなどに載せた場合、その影響はさらに大きなものになります。
安易に流れでた段階で、次の被害がうまれることも考えられるのです。
さらに効果的なはずの監視カメラが、設置されていない場所においては、あらたな犯罪を引き起こす可能性に満ちているということです。
カメラがない場所を選んで、犯罪におよぶということも考えられます。
まさに人間の心理そのものでしょう。
カメラの存在に気づいた瞬間、マスクをし、帽子をかぶる犯罪者もでてくるでしょう。
この方法で、カメラを無力化する可能性もあります。
世間の崩壊
なぜ監視カメラが増えたのかと考えると、最初に思い浮かぶのが、世間の目がなくなったという理由が最初に浮かびます。
日本が農業国であった頃、地域共同体が成り立っていました。
相互に人間関係の輪が成立していたのです。
しかし都市化が共同体の意識をかなり崩しました。
近隣相互の人間関係が希薄になり、不信感が増殖しています。
監視カメラに頼らなければ、治安を維持できないというレベルにまで達してしまったのです。
自分たちの安全は自分で守るという論理が、根を張り始めています。
自己責任という考え方です。
いざ事件が起きたときも、証拠として提出することが可能です。
事実、最近の犯罪では監視カメラの映像が必ずニュースで流れるようになりました。
自分自身がいつ被写体になってもおかしくない状況なのです。
プライバシーが侵害されのと同時に、内面の監視もされるようになりました。
スマホの普及はネット社会へ「私」を放出しています。
個人の嗜好までが、ビッグデータとして管理されているのです。
顔認証システムの発達で、多くの人間の集団の中から個人を特定することも可能です。
反体制的な政治思想を持った人間を特定し、追及することも不可能ではありません。
結論として、今の監視社会を是認するのかどうか。
その最終判断の材料をいくつかあげてみました。
あなたならば、どちらの立場に立ちますか。
これといった正解はありません。
法の整備に委ねるという考え方もあるでしょう。
その際にはどこまでを可とするのか。
線引きを明らかにしなくてはなりません。
いずれにしても大変難しいテーマです。
もう1度、じっくりと考えてみてください。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。