【小論文・幸福の条件】私たちにとって何が幸せなのかを再検証する

小論文

幸福の条件

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は日本人にとって、何が幸せの条件なのかを考えてみたいと思います。

出典は脳科学者、茂木健一郎『新しい日本の愛し方』です。

以前ある都立高校に出題されました。

今回はそのエッセンスを取り上げます。

簡単にいえば、経済成長と幸福度との関連を考察するタイプの問題です。

戦後の急速な経済成長が、日本人の幸福感をどのようにかえたのかというのがテーマです。

実際に1958年から1987年にかけて、日本人の平均的幸福度は改善していないという資料もあります。

この間に急激な経済成長があったにもかかわらず、数字には変化がないのです。

確かに物質的な基礎が満たされなければ、幸福感は十分なものにはならないでしょう。

それは誰にでも理解できます。

しかしそれですべてが解決するほど、人間は単純ではありません。

幸福という主観的な指標にアプローチするには、多面的な要素が必要なのです。

筆者はそれが具体的になんであるのかを論じようとしました。

幸福になるための条件を一心に考えたのです。

その結果、人間の幸福のうち、最大のものは、自分には手が届かない、縁がないと諦めていたものが、思わぬかたちで自分のものになる瞬間に訪れるのではないかと考えました。

そのような瞬間に、人は至福に我を忘れるのだというのです。

一見、難しいテーマですが、解きほぐして作業を進めていけば、その結論への道のりがみえてくる可能性もあります。

以下に問題文を掲載します。

じっくりと読んでみてください。

元の文章は長いので、割愛した部分があります。

課題文

日本にとって、幸福の条件とは、何だろう。

思えば、日本は、明治維新以来、ずっと自分たちには何かが欠落していると思い込んできたところがないか。

最初は、不平等条約の改正という、実務的にも重要な課題があった。

そのために、文明開化を図り、憲法を制定し、鹿鳴館まで作って、西洋諸国に「一人前の国」として認めてもらおうとした。

戦後は、戦争でアメリカ合衆国に負けたというトラウマから、なんとか抜けだそうと試みてきた。

そしてインターネット文明とグローバル経済という大波が押し寄せてきている今、日本人はまた、奇妙な切迫感に駆り立てられている。

もっと英語がしゃべれなければならない。

大学を国際化しなければならない。

これでは心が安まらない。

日本が抱えているさまざまな構造問題、文化的な障壁を解きほぐすことなしには、日本から再び陽が昇ることはないだろう。

日本人は、明治以来、自分たちには手の届かないものを幸福の条件として求めてきたような気がしてならない。

先進国になること、グローバルな存在感、国連常任理事国。

かつてのG7(先進国首脳会議)に参加することで、そのような欲望がかろうじて満たされてはいたが、それはもちろん日本の幸福を保証するものではなかった。

今、日本人が諦めかけているものとは何だろう。

グローバル化のかけ声が上がる中、内向きで立ち上がろうとしない若者たちは、何を諦めているのだろう。

仕事に疲れ、逃げ切り世代と揶揄されるおじさんたちは、何を手放そうとしているのだろうか。

諦めかけているものが、実は幸福の絶対条件などではなく、むしろ「しあわせの青い鳥」は思いもよらない別のところにいる、ということもあり得る。

西洋諸国の「立派な文化」に追いつけ追い越せだった頃、マンガやアニメが将来には「日本の幸福」につながると、誰が夢見ただろう。

私たちの課題は、幸福の方程式の複雑で豊かな糸を、認知的歪みから自由なかたちで解きほぐすことにある。

諦めかけていたものとは何か

設問は次の通りです。

問1 あなたはどのような条件の下にいる時、幸福だと感じますか。過去の体験をあげながら、その意味するところを800字以内で分析しなさい。

実際の課題文の長さはこの倍はあります。

いくつか割愛してあるので、重要なキーワードだけを紹介します。

幸福がどのような条件の下で成り立つのかという学問があります。

幸福経済学がそれです。

大変に複雑な人間の思考を科学的に分析しようと試みた学問なのです。

それによれば、「フォーカス・イリュージョン」という考え方が重要であると説明されています。

これはある一定の条件によって決定的に影響を受けてしまうと思い込む現象のことです。

その例として、次のようなものがあげられます。

「結婚して子供がいること」が幸せの条件であると思い込むこと。

「高学歴」「正規雇用」が幸せには不可欠であると考えていること。

ここに示された内容がさらに進んだ結果、経済の成長を目指し、多くの日本人が懸命に努力を重ねてきたのです。

しかしどこまでいっても心にゆとりができず、むしろ不安が高まるばかりという現状も報告されている通りです。

インターネットを通じて人々はもっと良質なコミュニケーションを手にするはずでした。

ところが現実はSNSなどを通じて、いじめがはびこり、フェイクニュースが拡がるばかりなのです。

1人前の国になろうとあがいた結果が現状そのものといえるでしょう。

そこでどうすればいいのか。

過去の経験に照らし合わせながら、まとめるという作業がここから必要になります。

キーワードを探す

この主題の原点には、何を置くのが適当でしょうか。

あなたなら何をポイントにしますか。

筆者は経済の成長だけでは、幸せになれないと論じています。

たとえ世界の覇者になったところで、仕事に疲れて何かを諦めてしまったのでは何にもなりません。

幸福の「絶対条件」などはないと筆者は言っています。

「しあわせの青い鳥」は思いもよらない別のところにいるとも発言しています。

あなたの今までの人生の中で、最高度に幸福だった時はどのような時でしょうか。

それを直視することから始める以外に手はないでしょうね。

なぜ、その時幸せだったのか。

その基本的なメカニズムは何か。

幸福の複雑な方程式を分析する時です。

人はパンのみにて生きるにあらずとは昔からいわれていることです。

つまり経済だけではない。

人間として、他者から認められること。

創造の喜びを持つこと。

感謝されること。

人とのつながりを強く感じること。

幾つも思い浮かぶ瞬間があるでしょう。

その具体的なシーンも心に浮かんでくるのではありませんか。

ただし経験談を語ることに熱くなりすぎないようにしてださい。

もちろん、その時の感動を明確に伝えなければなりません。

小論文の種類としても特殊なタイプの文章になります。

作文的な要素も必要です。

同時に分析への冷静な目がなければ意味がありません。

1度、60分でまとめてみることをお勧めします。

ひたすら練習をしてください。

書くことです。

畳の上の水練という言葉があります。

泳ぎは実際水の中に入らなければ、上達しないのです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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