【小論文・夫婦別姓】日本だけが夫婦同姓の制度を持つという厳粛な現実

学び

夫婦別姓

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は夫婦別姓の是非について考えます。

このテーマは過去、小論文に何度か出題されました。

選択的夫婦別姓についても、かなり長期間にわたって論議され続けています。

しかしいまだに決着がついていません。

ここではその是非とともに、背景を分析してみましょう。

この問題が出題された時、1番最初に考えなくてはならないことは何か。

それは日本が、夫婦同姓を定める婚姻制度を有する世界唯一の国であるということなのです。

ご存知でしたか。

現在の日本の制度では、婚姻によって、夫婦のどちらかが必ず姓を変えなければならないことになっています。

それでは、よく話題になる「選択的夫婦別姓」とは何でしょうか。

この表現の内容もきちんと把握しておく必要がありますね。

それは「夫婦は同じ姓を名乗る」という現在の制度に加えて、「希望する夫婦が結婚後にそれぞれの結婚前の姓を名乗ることも認める」というものです。

希望する夫婦は別々の姓を名乗ってもいいというのが基本的な論点です。

geralt / Pixabay

世界に目を向けてみましょう。

儒教の価値観が根強い韓国や中国などの近隣国はどうでしょうか。

既に夫婦別姓が導入されています。

ドイツにおいては、従来夫婦同姓制度が敷かれていました。

しかし現在は1993年の法改正を経て、選択的夫婦別姓が導入されています。

ここまで議論が続いてきた背景はさまざまです。

長い間、無駄に議論をしていたワケではもちろんありません。

メリットとデメリットを出し切ったといっても過言ではないのです。

夫婦別姓の大きなメリットは以下の通りです。

①手続きの負担を軽減できる
②仕事に影響を与えない
③男女平等の概念が促進される

課題文をさっそく読んでみましょう。

どの立場に立って書かれたものかを正確に読み取りながら、理解を深めてください。

課題文

日本では、男女が結婚すると夫もしくは妻のどちらかの姓を選択し、夫婦同姓にすることが法律で定められている。

現在は、妻が夫の姓に変更するケースが多い。

しかし、現代では女性の更なる活躍が求められており、女性が自立して社会で活躍し、無理なくキャリアを蓄積していくためには、それぞれの価値観に基づいて夫婦別姓を選択することが可能となる「選択的夫婦別氏制度」の導入が必要である。

なぜなら、婚姻によって姓を変更することで働く女性にさまざまなデメリットが生じることがあるからだ。

研究者や弁護士をはじめとする個人の姓名が業績の連続性を示す職業に就いている人たちにとっては、途中で姓を変更することがキャリアを中断することにつながり、不利益を被る場合がある。

また、長年使用してきた姓を変更するにあたっては、戸籍だけでなく各種免許や預金口座など、あらゆる登録情報を変更しなければならないという不便さもある。

確かに、夫婦が同姓であることは日本の伝統であり、家族の絆につながるものである。

夫婦が別姓になることによって、これまでより離婚へのハードルが低くなり、離婚率を上昇させてしまうという指摘がある。

さらに、父母の姓が異なると子供の姓も選択制になるため、どちらの姓を名乗らせるかで夫婦の意見が対立したり、姓が異なると子供と親との連帯感が損なわれたりするといった、家庭内のゆがみが生じることを心配する反対意見もある。

しかし、スウェーデンなど夫婦別姓の制度をとっている国の離婚率が日本に比べて高いという事実はない。

また、姓の異なる祖父母と孫との間にもしっかりとした絆があることを実感する人も多く、同姓でなければ家族の絆を深めることができない、というわけではない。

絆や連帯感といった、家庭内ではぐくむものを法的に守ろうとするより、個人の社会生活における利益を守ることの方が、社会的にも意義のあることではないだろうか。

二項対立のテーマ

この課題文に対して問いは以下の通りです。

筆者の主張をよく読み、それに対するあなたの意見を800字以内で書きなさいというものです。

夫婦同姓に対して、この筆者はどの立ち位置にあるか。

正確に読み取れましたか。

夫婦別姓に反対する人の論点を1つずつつぶしながら、テーマ切り開いているのがよくわかりますね。

デメリットだといわれていることを杞憂だと断じているのです。

夫婦別姓の制度をとっているからといって、離婚率が高くなることもなければ、家庭内の絆が弱まることもないと主張しています。

このシステムに賛成する人の主張はいくつかあります。

➀結婚相手の名前を名乗りたくない。
②自分の姓に誇りを持っているから変えたくない。
③名前を変えることで夫と対等ではないと感じる。
④結婚によって姓の変更を強いられることが受け入れられない

ここに示されたものは、どちらかといえば、現実的な問題というよりも、むしろ精神的な要素が強いようにも感じます。

基本は自分自身のアイデンティティの根幹をなすものは姓名だということでしょう。

特に男女同権の意識が強い世代には、ごく当然という意識が芽生えているに違いありません。

ここで少し深掘りをしてみます。

議論の是非

メリットとしてよくあげられるのが以下の事実です。

夫婦別姓システムはあらゆる手続きの負担を軽減できるということです。

姓が変わることに伴って発生する手続きは多岐にわたります。

免許証やパスポートなどの公的なものから、銀行口座やクレジットカードなど細々したものまで、短期間で多くの手続きが必要です。

これは結婚後、実際に女性たちが役所や銀行に出向いたことを考えれば、確かに煩雑だったという実感を伴います。

反対にデメリットとしては次の内容があります。

多くの場合、仕事に影響を与えるという考えです。

夫婦同姓化に伴い、主に女性は仕事上で影響を受けることが多々あります。

姓を同一に変えることで社内、社外をあわせ、人間関係をもう一度作り直さなければなりません。

それがいやで、以前の姓でそのまま使っている人を多く見かけます。

戸籍上のものと、完全に切り離している現実を見たとき、混乱を生むことはもちろん、職種によってはそれまで積み上げた実績が切り取られるという可能性もあります。

税金や、その他、役所関係の書類記載などで、戸惑うことも多々あるのが現実です。

夫婦別姓が認められれば、こうした不便は全てなくなるため、結婚後も仕事を続けたいと考える女性にとって大きなメリットでしょう。

世界の流れの中で、多くの日本人はこの問題をどう考えているのでしょうか。

ポイントは人々の本音がどこにあるのかということです。

家制度が浸透しているという意味では儒教が生活の隅々に行き渡っている中国や韓国などを参考にした方がいいのかもしれません。

夫婦同姓という考えには「男性の家庭に女性が入る」という従来の価値観が色濃く反映されています。

しかしそのシステムをこの2つの国は採用していません。

男性の姓に変わることに対して抵抗があるという人の割合が、日本でどこまで広がりを見せるのかというのが、大きな論点でしょうね。

自分の姓に愛着がある人にとって結婚同姓化やはり、不満の残るシステムです。

男女の不平等を感じるなという方が無理なのかもしれません。

しかし子どもが生まれた時には、どちらの姓を名乗るかということが大きな争点となる可能性もあります。

それでは選択的夫婦別姓がどれだけ国民に支持されているかについて考えてみましょう。

以下が2021年12月〜2022年1月にかけて内閣府の調査結果です。

「夫婦同姓の制度を維持した方がよい」27%
「夫婦同姓を維持したうえで旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」42%
「選択的夫婦別姓の制度を導入した方がよい」29%

世論は完全に分裂しています。

これらの事実を頭に入れておいてください。

そのうえで、この論議を1度まとめることをお勧めします。

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内容の理解が進むことは確実です。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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