副詞は厄介
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回はつい使ってしまう面倒な副詞についての話です。
ちなみに副詞って何でしょうか。
文章の中で他の言葉の意味を詳しく説明する品詞のことです。
修飾する相手はもっばら用言。
わかりますか。
動詞、形容詞、形容動詞です。
副詞の使い方はとても難しいです。
いいかげんに覚えていると、必ずトンチンカンな文章になります。
間違えやすいのに連体詞があります。
こちらは体言を修飾します。
きちんと区別できるようにしておいてくださいね。
副詞にはたとえばどんなのがあるのでしょうか。
みなさんがよく使うのはどれか。
ちょっとみてみましょう。
副詞は、ゆっくり、ぶらぶら、そろそろなどひらがなで書くことが多いです。
これがあるだけで、どんな風に歩いているのか、よくわかりますね。
このように動詞を修飾します。
動作が具体的によく見えるようになるのです。
しかし今回取り上げるのは小論文でよく使われる副詞「とにかく」です。
どんな時に使うのか
前に書いてある内容を否定してしまいたい場合です。
この副詞でイッパツ逆転なのです。
いろいろと書いたけれど、ここから先が実は1番大事なんだと呟く表現です。
論文というのは少しずつ論点を積み重ねていくものです。
それを期待して読んでいるのに、突然「とにかく」と書かれてしまうと、それまでの論理はどうでもいいという半ば投げやりな姿勢になります。
こういう表現は論文には向いていません。
つまり使ってはいけないのです。
意識して文章をまとめてください。
動詞の状態を示し、どのように歩いているのかなどを表現する副詞とは全く使い方が違います。
似たような表現に「いずれにせよ」「ともかく」などがあります。
自分が主張したいことを強めようとする気持ちが先行し過ぎると、この表現が必ず飛び出してきます。
一般的に日本人は話が複雑になるのを嫌う傾向があります。
面倒臭くなると全てを水に流そうとするのです。
少しくらい不明瞭であっても強引に話を進めてしまおうとします。
表現としてはやや無鉄砲ともいえますね。
結論だけが前面に出て、途中の論理をすべて飛ばしてしまうのです。
これでは小論文の命である論理性が台無しになります。
書いているうちにだんだんワケがわからなくなり、すべてをご破算にして、「とにかく~なのである」と言ってしまいたくなるのです。
危険信号です。
誰もが陥る落とし穴なのです。
そういう気分になった時が1番危ないと覚えておいてください。
一人合点の表現
小論文を書いている時、もう1つよく使う表現があります。
それが「やはり」です。
これは再確認の意味を持ちます。
日本人がよく使う表現ですね。
なぜこの言葉が出てくるのでしょうか。
少し深堀りしてみましょう。
自分が予測していた事実と同じ結果が出てきた時、よく「やはり」を使います。
ポイントは自分だけが納得していて、その通りの結果になったというだけではありません。
小論文では相手もあなたと同じ土俵で論理を組み立ててくれているのです。
しかし全ての論点に対して必ずしも納得して理解しているワケではありません。
それなのに、突然「やはり」と言われると、強引だなという印象を持ってしまいます。
「やっぱり」というのもあります。
こちらは日常的に使う口語です。
小論文で要注意なのは「やはり」でしょうね。
十分に注意して書いていれば、おそらくそれほどに使うことはないに違いありません。
この言葉が出てくる時は、自分の論理に甘さがある時なのです。
面倒臭いからつい使ってしまいます。
これで気分がさっぱりして次の文脈に進めるのです。
しかし読んでいる人はどうでしょうか。
あなたの論理に乗っかって文章を読んできました。
それなのに「やっぱり~である」と言われると拍子抜けがしてしまいます。
はじめから無理にここへ引っ張ってくるつもりだったんだなということになってしまいます。
ある意味で読者はシラケてしまうのです。
これは絶対にNGです。
一緒に考えましょうという態度を失って、最後にこうだから当然こうなるんだと言われても、首をひねるだけです。
ちっとも面白くない。
思考を深める
小論文は読者との合作作業です。
1つの段落を読みながら、なるほどそういう論理もあるのだなと読者を納得させる必要があります。
せっかくそのつもりで読みを深めているのに、「やはり」などと言われると、1人で荒野に置いて行かれた寂しさを感じます。
どんなに時間がかかったにせよ、最後まで読者と付き合わなければいけません。
その作業があなたの文章をより確かな信頼するものに成長させていくのです。
テーマは何が出るかわかりません。
来年度は今年以上にSDGs(持続可能な開発目標)などの問題がより細かくなって提出されるものと思われます。
今年の大学入学共通テストは以前のセンター入試を踏襲した要素の問題が多かったようです。
しかし来年は科目が再編され、より思考を深める課題が多く出題されるに違いありません。
判断力や表現力を集中的にみていこうする傾向が強くなるそうです。
まさに論理をどう組み立てるのかいう視点が重視されています。
それだけに、安易な副詞の使い方で、文の質を下げてはいけません。
このスキルは今後社会で生きる時に役立つと信じます。
たかが副詞、されど副詞です。
いいかげんな表現に逃げ込むことなく、まっすぐにチャレンジしていくことが大切でしょう。
書く練習を続けてください。
それ以外に道はないです。
今回も最後までおつきあいいただきありがとうございました.