【小論文の鉄則】主語と述語を入れ子にしてズレた文章を書くのは最悪

小論文

初心者のパターン

みなさん、こんにちは。

小論文添削歴20年の元高校国語科教師、すい喬です。

今年の大学入試も国立大学の2次試験を残してほぼ終わりました。

私立の発表も続いています。

試験というのは合格すると一安心ですが、落ちた時は大学の壁が非常に高く感じられるものです。

実際に受験してみると、この感覚がよくわかるのではないでしょうか。

今回は初心者がよくするミスについて考えてみます。

典型的な失敗のパターンです。

自分ではちゃんと書いているつもりなんでしょうが、後で読むと何を言っているのかよくわかりません。

ポイントは入れ子構造になっている文章のことです。

この表現をご存知ですか。

あのロシアのおもちゃ、マトリョーシカ人形を思い出してください。

大きな人形の中にそれより少しちいさいのが幾つも次々と入っている人形のことです。

誰もがみかけるロシアの代表的なおみやげですね。

あれと同じことを文章でしてしまうのです。

簡単にいえば、1つの文章をもう1つの文章で挟み込むというスタイルです。

主語と述語で本来成立している文の中に、さらに主語と述語のある文章を入れてしまうのです。

添削していると、このタイプのものが実に多いですね。

本人はなんとも思ってないのです。

自分では考えたことを気持ちよく書き終えたと満足しているのでしょう。

しかし読まされる方はたまったもんじゃありません。

1番多いのは「私は…願う」「私は…思う」という文です。

この「私」と「願う」「思う」の間に全く別の文章を挟み込むのです。

一見すると論文らしくみえます。

しかし論旨がゴチャゴチャして、大変読みにくいのです。

入れ子の文の例

次にあげるのは入れ子の文章の例です。

本当に読んでいても気持ちが悪いです。

私は現在の日本は格差社会が進行しつつあるものの、他人にそれと知られるのを怖れ、なんとか隠して生きていこうとする人々の態度は間違っていると考え、抜本的な解決策を願うものである。
私はある作家が自分の子供の頃について書いた短い文章に印象的だった風景を描写してあったことにとても感動し、いい作品だと思った。
私はいつも近所の公園まで30分ほど歩き、冷たい空気を感じながら生きている喜びを味わいたいと考えるのはいいことだと思う。

どうでしょう。

westerper / Pixabay

ちょっと読んだだけでは意味がわかりませんね。

もちろん全く理解できないというワケではありません。

しかし一言でいえば、風通しの悪い部屋にいるような印象です。

実に嫌な気分です。

なぜでしょうか。

理由は簡単です。

主語と述語がいくつも出てくるからです。

どの主語に対してどれが述語なのかがはっきりしません。

これが1番まずいパターンです。

初心者はこういう文章を平気で書きます。

添削している者の立場になってみてください。

ワンセンテンス・ワンメッセージ

文章の基本はなるべく短くすることです。

主語と述語の距離を近いものにしなくてはいけません。

これが離れていると、ついその間にもう1つというわけで、別の文脈が入ってしまいます。

これは絶対に避けなくてはいけません。

主語があったらそれにふさわしい述語を書くこと。

どうしても間に挟みたくなる時はもう1つ別の文にしましょう。

そうすればストーリーがより単純になります。

その方が理解されやすいのです。

しかし添削の仕事は、文をなおさなければならないということです。

仕方がありませんから試みます。

その際は徹底的に分解して、2つまたは3つの文章に分けます。

なるべく単純な構造にしていくのです。

英文法の授業で習ったことはありませんか。

短文、重文、複文の違いを。

長くてこんがらかった文章はたいてい複文です。

それを単文にかえていくのです。

掛詞ではありませんが、単文の構造のものは基本的に短い文が多いのです。

それを適当な接続詞で結びます。

これが理解されやすい文章を書く時の基本です。

これさえ守っていれば、とんでもない文になることはありません。

どこがいけないのか

「私」で文を始めたのがまず1番ダメです。

最後に「願う」「思う」「考える」などを置いたので、その間にもう1つ文章を挟み込んでしまいました。

その結果、奇妙な文が出現することになったのです。

少しなおしてみます。

 1 現在の日本は格差社会が進行しつつある。
 2 富めるものは嫉妬を怖れ、貧しい者はなんとか隠して生きようとしている。
 3 このような態度は間違っているのではないか。
 4 格差はこれからも広がる一方である。
 5 抜本的な解決策への糸口を見出していかなければならないだろう。
 6 社会的な補償制度や最低限度の文化的な生活を維持するため、バイパスの道筋を認知させていくことが喫緊の課題である。

1で「私は」を切ってしまいます。

うるさいだけです。

2で「しかし」という接続詞を入れます。

逆接の意味が正確に伝わります。

3でズバリと自分の意見を入れましょう。

4以降に今後の課題を示します。

ここからが本当の実力の見せ場です。

今まで勉強してきた見聞を大いに披歴するところです。

残り2つの文についても自分でやってみてください。

ポイントは「私」を取ってしまうことです。

これがあることで文が大変にわかりにくくなっています。

書いている人は必要だと思ったのでしょう。

論文は論理が大切なのです。

自分が思ったり、考えたりしているからこそのものです。

わざわざこう考えた、こう思ったなどという文を入れて複雑な入れ子構造にする必要はありません。

もっと単純でいいのです。

最後にもう1度。

今回の記事で1番大切なことは主語と述語の距離をなるべく短くするということです。

1つの文には1つのメッセージを。

いくつも入れようとすると、文章がゴチャゴチャになります。

初心者ほどこの傾向が強いのです。

十分に注意してください。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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