【落語】お正月の寄席は陽気な顔見世の底抜けお屠蘇お祝い気分

ノート

お正月の寄席

みなさん、こんにちは。

アマチュア落語家、すい喬です。

いよいよお正月ですね。

1年なんてはやいもんです。

光陰矢の如しといいますからね。

この言葉の意味をご存知ですか。

光陰はああ矢の如しだなあという意味です。

というギャグをよく古今亭志ん朝師匠がマクラでやってましたね。

あれから何年が経つのでしょうか。

本当に月日の経つのははやいものです。

あとわずかでお正月です。

あちこちのお店で鏡餅を売っているのをみると、なんともいえない感慨があります。

ぼくが幼かった頃はもっと寒かった記憶があります。

東京は随分とあたたかくなりました。

木枯らしがピューピュー吹いて、頬が真っ赤になったのをよく覚えています。

おなじように、お正月の風景も様変わりしました。

それでも新年を祝う気持ちにかわりはありません。

今年のお正月は寄席を覗いてみませんか。

もちろん、元旦からやっています。

通常と違い、1日に3回の入れ替えを行います。

ものすごい回転率と言ったらいいのでしょうか。

試みに新年の新宿末広亭のスケジュールを見てみましょう。

初席の予定

いつもと違い1日から10日までを初席と呼びます。

第1部 11時~14時半。
第2部 3時~18時半。
第3部 19時~21時。

公演は落語芸術協会です。

春風亭昇太が会長をしている団体です。

1日~5日までと6日~10日で出演者がかわります。

いつもは1時間に4名。

つまり1人の持ち時間が15分前後ですが、お正月ばかりはとんでもないくらいに芸人が出たり入ったりします。

持ち時間は1人7~8分というところ。

いつもなら1日おきに出られるワクのある二つ目の人もお正月だけは5日に1度というところでしょうか。

それくらい芸人の数が多く時間は限られているのです。

お正月は顔見せがメインですから、落語と呼べるようなものはほとんどありません。

ちょっとした小咄をやったと思ったら、もういなくなってしまいます。

時間がないと、ほんの数分で交代ということになります。

お祝いの席と考えればいいのではないでしょうか。

必ずトリにはその協会を代表する真打ちが登場します。

新宿では初日の第1部のトリは会長の春風亭昇太師匠です。

1年間のご贔屓をお願いするという趣向になります。

浅草なら観音様に詣でたついでに、ちょっとお正月気分を味わおうかというところですかね。

料金もこの期間は特別で少し高くなります。

それでも他の劇場のチケットに比べれば安いですけどね。

肝心なのは座席に坐れるかということです。

これはなかなか厳しいです。

よほど早くから並ばないとダメでしょうね。

あまり混む時は整理券を出したり、2階席を開けます。

寄席は元々それほど大きな空間ではありません。

すぐ一杯になってしまうのです。

末広は両側が桟敷席ですから、坐るのも馴れないとくたびれてしまいますね。

お正月はNHKテレビの中継も入ったりしますので、いつものようにのんびりと落語を楽しむというより、お祝い気分を味わうといったほうがあっています。

芸人の数

とにかく次から次へと芸人が出てきますので、知らない人ばかりということもあります。

こんなにたくさんいたのかと驚くかもしれません。

間に紙切り、手品、漫才など色物も入ります。

さらに獅子舞も。

これは賑やかでいいですね。

お正月気分満載で飽きることはありません。

晴着姿の女性客などを見たり、高座におかれた松飾りや酒樽などを眺めていると、やっぱり正月の寄席もいいなと感じます。

本当に落語が楽しみたかったら、10日過ぎにでかけた方がよさそうですね。

落語の世界では11日からを「二之席」と呼び、20日までがお正月興行なのです。

ちなみに今年の初席の予定は…。

落語協会は上野鈴本、浅草演芸ホール。

落語芸術協会は新宿末広亭、池袋演芸場となっています。

それぞれの協会のカラーがかなり違いますので、自分の目で確かめてみるのも楽しいです。

お正月は忙しい

落語家の元旦は黒紋付きの羽織袴姿の正装で、師匠の家に集まり、新年の挨拶をするところから始まります。

きちんと挨拶をして、初席の寄席に出かけるのです。

一門の中には早朝から、大師匠の家に挨拶に行き、それから師匠の家へ赴くところもあります。

日本のお正月の風習が今でもきちんと残っているのです。

人気のある落語家は忙しく、寄席を次々とかけ持ちします。

楽屋はとにかく大変です。

着物も初席用はまた一味違うものをみなさん身につけます。

落語家は、新年に必ず手ぬぐいの交換をするのが習わしになっています。

年末からお年玉と手ぬぐいの用意をするのです。

お年玉はお正月に会った年下の噺家に渡さなくてはなりません。

お囃子さんにも必ずお年玉を渡します。

この時期の出費は相当な額になります。

「二之席まではお正月」というのも落語家にとっては常識です。

客席にはお正月の雰囲気がなくなりますが、噺家の世界はまだお正月です。

つまりそれまではお年玉をもらえる期間ということなのてす。

1日に18組くらいの芸人の世話をするのがお正月の前座の役目です。

高座の座布団を返すのはもちろん、お茶を出したり、履き物を揃えたり、さらには着物をたたんできちんとしまうといった仕事もあります。

さらにはお囃子の太鼓を叩かなければいけません。

立前座になると、全体の番組の進行を調整する仕事もあります。

どれも失敗の許されないことばかりです。

しかしお正月は師匠方からお年玉をいただける貴重な時でもあります。

挨拶をされたら師匠方は前座にポチ袋を渡さなければなりません。

Photo by Norisa1

顔をあわせ、おめでとうございますと言われた瞬間、今年もよろしく頼むよといった気持ちをこめて渡すのです。

これがバカになりません。

なにしろものすごい数がいます。

自分の一門だけでなく、他の一門の若手にも全て渡すのです。

たとえわずかな額でも積もれば大変な金額になります。

よく噺家さんとしゃべっていると、またこの季節になったと皆さん頭を抱えています。

しかしかつて自分がもらったように、後輩にあげるというこの世界のしきたりは捨てたものではありません。

前座は基本的に無給です。

お正月のお年玉がなによりの生命線だといっていいでしょう。

なかには前座の顔をみないようにする師匠もいるとかいないとか。

それもこれもお正月の風景です。

前座さんにとって浅草演芸ホールと他の寄席では、疲れ方が違うといいます。

出演する落語家の数がとても多いのです。

その分、実入りのお年玉の額も違います。

浅草は高座の時間が他より短く、やたらと忙しいのです。

とにかくくたびれるそうです。

新年のホール落語会などでは、顔を見たこともない立川流の前座にもお年玉をあげないといけないと嘆く師匠方もいるとか。

しかし金離れがきれいというのも芸人の粋な見栄の一部です。

落語家の「お正月風景」はそれぞれの一門によっても全て違います。

ある一門は師匠のうちに集まり、挨拶をし、手ぬぐいを交換。

先輩からお年玉をもらってそれぞれ寄席に出かけます。

夜は再び師匠宅で新年会を行うそうです。

噺家のお正月の風景には、まだ日本の伝統が残っているといえますね。

是非、お正月は寄席見物から始めてみてはいかがでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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