チャットGPT
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
このところ、新聞を賑わしているのがこの生成系AIの存在ですね。
その代表が「チャットGPT」です。
もう試してみましたか。
無料のトライアル版がありますので、どの程度の実力なのか、試みてください。
実に面白いです。
現在のところ、恐怖感を覚えるというレベルにまでは達していません。
あくまでも話のタネというレベルです。
とりたてて過激な意見を述べるわけでもなく、ごく常識的な回答にとどまっています。
しかしAIを甘くみてはいけません。
いずれ大きな影響を及ぼしていくに違いないのです。
国家単位で脅威を感じているという報道もありますね。
イタリアもアメリカもその使い方には警鐘を鳴らしています。
一時的に使用を中止させたイタリアの警戒感の根には、何があるのでしょうか。
さらにアカデミズムの受け止め方の方がより深刻です。
この問題に最もはやく反応したのは、いくつかの大学でした。
上智大は「本人が作成したものでないレポートは認めない」と告知しています。
ある意味、これは当たり前の話かもしれません。
発覚した段階で「不正行為」とみなすとのことです。
ただし教員が認めた場合においては、その限りではないという注もついています。
この但し書きの扱いは非常に難しそうです。
そこを抜け道にして、レポートが提出される可能性は否定できません。
ある意味で、既に「時遅し」なのです。
そういう理解の仕方が、この内容からは感じ取れます。
適宜見直し
上智大学の通知にはつぎのような文言もありました。
教育への活用も含め、適宜見直しや検討を続けるとのことです。
これは事実上、野放しとはいわないまでも、その全容を捉えきることがいかに難しいかを告白したものと同じ印象です。
実際にチャットGPTを使ってレポートの文章を書いてみれば、そのことがよくわかります。
流暢な表現を使い、問題の本質を掴んでいます。
革新的な内容はそれほどに見受けられません。
しかし多くの人が納得できるレベルの意見は、きちんと述べるのです。
つまりこれを基本的な部材にして、スケルトンの論理を組み立てるのが第一段階だとしましょう。
その上にたって自分の論点を重ねていく。
その二重構造で、大学が要求するレポートならば、ほぼ完成するのではないでしょうか。
AIの精度は日々向上しています。
毎日、多くの人がアクセスし、問いを重ねる中で、AIは学習を深め、何が喫緊の問題なのかを把握し続けているのです。
意欲的な学生は、このシステムを必ず使います。
断言できます。
その上にたって、自分の考えを付加価値として、足していくでしょう。
逆にいえば、教員はその資質を多様な論点から試されることになりました。
以前と同じような学習の方法で授業をしていれば、その内容が古びたものになっていたとしても、気がつかないこともあり得ます。
あるいはそこまでの熱意を失って、授業をしているということもあるでしょう。
それを学生に見破られる可能性も色濃くなります。
生成系AIはこれから学んだ内容よりも、どこまで学んだのかというプロセスをより重視する方向に向かって進むのではないでしょうか。
教員の負担感
これから大学に進学する学生にとって「チャットGPT」は既にそこにある風景の1つだと考えられます。
ネットやPC、スマホがない状態が考えられないとの同じです。
あらゆるレポートをPCで打ち、メールで送るというのがごく当たり前になって、まだそれほどの年月が立っているワケではありません。
現在、それを否定することは誰にもできないのです。
生成系AIの利用もそれと同様だと考えればいいでしょう。
レポートのテーマについて、まず調べてみる。
今までならば、ネットで関連した語句を検索しました。
それと似た形で、これからは「チャットGPT」を使うのです。
ここまでの流れを止めることはできません。
入力された情報は日々新しくなり、より問題点が正確に指摘されていくはずです。
ただし著作権などとの絡みはつねに警戒しなければならないでしょうね。
学生は以前よりも短時間で、アウトラインを組み立てることができます。
当然、有効に使うと思われます。
問題は課題を出す教員の側の負担感が増えることです。
どこまでがチャットGPTによってつくられたものなのかを、見抜く目を持たなくてはなりません。
全てを自分の力でやって書き上げた学生のレポートと、生成系AIを使って短時間に完成させたレポートをどう峻別するのか。
当然、評価の問題が関わってきます。
最悪の場合、スケルトンの屋台骨の部分をAIに組み立てさせたものの方が、内容がしっかりしているということもあり得ます。
その場合、どう評価し判断すればいいのか。
これは実に悩ましい問題です。
最悪のケースでは、学生間の信頼や友情の問題にも発展しかねません。
それ以上に、アカデミズムの危機ともいえます。
口頭試問の活用
さまざまなケースを考えた時、レポート提出の形を別のものに変更せざるを得ないケースがでてくるかもしれません。
あるいはレポートを前において、口頭試問を課すということも考えられます。
教員の負担感が増すのは止むを得ないでしょう。
本当に自分で組み立てて書いたレポートならば、どのような視点から問われても、回答することは可能なはずです。
話題をもう少し広げて、小論文のケースはどうなるでしょうか。
影響が強くでると思われるのは、あらかじめ自宅で書いた自己推薦文や志望理由書の類です。
当然チャットGPTに頼ることもあるでしょう。
そのままの文章ではなく、自分なりに換骨奪胎したものをまとめるということが考えられます。
志望理由書などは、基本的な形がみえれば、有効にこのシステムが使えるかもしれません。
そうなると、大学や高校側も、さまざまな工夫が必要になります。
その場で書かせるパターンが増えるかもしれませんね。
いずれにしても、来年度入試の要綱をチェックしつつ、どの方法が最も効果的かを考えてみてください。
その他、過去問をチャットGPTを使ってやってみるのも1つの方法です。
模範解答などと、どのの程度のズレがあるのか。
それを見極めるのもいい方法でしょう。
便利な機能は徹底的に活用しなければいけません。
それが受験をのりきっていくための道です。
少し話を広げ過ぎてしまいましたが、新しい時代には新しい器が必要です。
研究を続けて下さい。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。