安保理の今
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
ロシアのプーチン政権によるウクライナ侵攻は実に悲惨なニュースです。
何千人もの無抵抗な人々が無差別に殺されたとか。
国連の安保理も機能しません。
常任理事国がたった1か国でもNoをいえば、その提案は否決されるのです。
ここまで力がないのかと、つい考えこんでしまいます。
国連だけが唯一の希望なのでしょうか。
それぞれの国が自分の権益を主張すれば、必ず衝突するのは目に見えています。
未来の世界像を描くこともできません。
多くの国で包囲網を築き、次第に力を削いでいく以外に方法はないのかもしれません。
しかし軍事力を前面に出して、抵抗されたら、次にできることは何なのか。
疑問は膨らむばかりです。
中国の海洋開発も気になります。
北朝鮮のICBM核爆弾もつい目と鼻の先です。
以前は明らかに世界の様相が変わっていますね。
ロシアも戦略核兵器を使用するとか、細菌兵器を試すとか、さまざまな発言をしています。
科学に研究の停止はありません。
どこまでも進んでいく。
たとえ、地球が崩壊することになっても、人間は先へいこうとするのでしょう。
理性の弱さを感じます。
どうしてこんなことになってしまったのか。
悲しいですね。
アジアハイウェイ
1959年、国連はアジアを貫いている道を整備し、それぞれの国を結ぼうと計画しました。
東南アジアから遠くイランまでを覆っている道路網、通称アジア・ハイウェイがそれです。
ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、バングラデシュ、インド、パキスタン、アフガニスタン、イランの首都を結び、さらにトルコからヨーロッパへと至る14万キロの道です。
1995年、NHKはスペシャル番組の中で8つの国境を越えて取材を敢行しました。
途中かなり危険な目にもあったようです。
ぼくは3冊刊行されていた記録集の中から、特にアメリカ同時テロに絡んだパキスタン、アフガニスタンに関する第3巻を読んでみました。
『アジアハイウェイ』(NHK出版会)にはさまざまな写真が載っています。
「コーランの聞こえる道」という副題からも分かるとおり、まさにイスラムの論理が支配する国々ばかりのルポです。
パキスタン編では学校の施設が足りず、住宅街の路上までもが教室として使われている様子が掲載されています。
ジルガと呼ばれるパシュトゥーン人たちの長老会議の決定までをメモしたもの。
聖者の命日に行われる祈り、ラホールの街のバザールの賑わいなども紹介されていました。
特にインドとの戦争は多くの悲劇を生みました。
パキスタン側に住むヒンドゥー教徒はやむなくインドへ移住していきました。
その時、ヒンドゥー、シーク教徒はイスラム教徒を襲撃し、略奪や殺戮を繰り返したのです。
もちろん、その反対も同様です。
犠牲者は双方で50万から100万人にのぼったと言われています。
避難途中の難民達が恰好の標的になったのです。
3度にわたる戦争は互いに憎しみだけを増す結果に終わりました。
アフガニスタン
アフガニスタン編では首都カブールの様子が詳細に報じられています。
あらゆる建築物が壊され、人の住めそうな場所はほとんどありません。
1992年、反政府ゲリラたちがイスラム政権を樹立してから、ずっとゲリラ各派の争いが収まることはないのです。
タリバンの重要な基地であったジャララバードは、衛星写真から見ると、いくつもの地下に通じる道があり、そこには様々な兵器が隠されていたそうです。
アフガニスタンは多民族国家です。
大小あわせると10以上の民族が共存しています。
しかしそれぞれの民族間には微妙な貴賤関係があり、その階層が社会の内部に強く根付いているのです。
その中でもパシュトゥーン族が最上級で、その後をタジク族、ウズベク族、トルクメン族、ハザラ族などと続きます。
それぞれ就ける職業も自ずと決まっているのです。
このことがアフガニスタンという国の難しさを象徴しているといってもいいでしょう。
タリバンも彼らをうまくイスラムという一つの教義でまとめようとはしたのでしょう。
しかし何かことがあれば、内部の確執が芽を吹きます。
同じイスラムの中も、スンニ派、シーア派、ワハーブ派などのグループがあります。
また反タリバンの流れもあり、簡単に図式化できないといいます。
バーミヤン遺跡の爆破という愚挙に出たのも、強硬派が一歩前に出たからということです。
アメリカなどが懐柔策をとれば、再び彼らが力を失うことも考えられます。
新しい流れができては、すぐに潰れると新聞は報道しています。
父を失った子はたとえ母親がいても皆、孤児の扱いを受け、優先的に神学校への入学が認められるそうです。
その子供達がまた聖戦を声高に叫ぶということになれば、未来の図式はまさに混沌としていくだけでしょう。
アフガニスタンはこの他、世界最悪の地雷地帯、ヘラートを抱えています。
アメリカの統計によれば、世界60カ国には計8500万個の地雷が埋まっているのだとか。
その最大保有国はアフガニスタンの1000万個だといいます。
その内の実に100万個がヘラート周辺に埋まっているのです。
地雷除去
地雷除去作業は遅々として進みません。
1日にやっと50個みつけられたとして、数10年の歳月がかかるということです。
アメリカはかつてこの国をずっと支援してきました。
さらに北部同盟に加担し、タリバン勢力を押さえつけようとしたのです。
北部同盟はその後どうなったのか。
日本にいると、ほとんど情報が入ってきません。
戦闘が終わるとはどういうことなのか。
その間にも子供や老人は次々と飢えて死んでいきます。
政治は非情です。
必要な時だけ人々や国土を利用してあとは遠慮会釈なく切り捨てていきます。
それが政治というものです。
チャドルという真っ黒な布を頭からかぶり、外を歩く女性達の生の声はマスコミの報道でも全く聞くことができません。
この国はいったいこれからどうなっていくのでしょう。
素朴で心やさしいという彼らが、日常生活を無事に送れるよう今はただ祈るだけです。
ウクライナも全く同様です。
隣の国、ポーランドには250万人が避難したとか。
これからどのような暮らしをすればいいのか。
全く未来が見えません。
人間は地球に出現して以来、戦争をやめたことがないのです。
武力に費やすエネルギーは膨大です。
救いのない悲しい現実です。
ちなみにアジアハイウェイ・プロジェクト参加国は、2003年11月に参加表明した日本も含め、32カ国です。
現代のシルクロードを目指して計画されました。
総延長約142,000kmの国際道路網が形成されつつあるところです。
今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。