【おカネの作り方】ホンモノの代替品が現金になるという謎のカラクリ

ノート

裸の王様

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は高校1~2年で習う評論をとりあげます。

タイトルは「ホンモノのおカネの作り方」です。

1985年刊行の『ヴェニスの商人の資本論』に収められています。

覚えていますか。

ほとんどコピーと同じですね。

岩井克人という経済学者が書いたものです。

考えてみればお金というものは実に不思議なものです。

ことに紙幣はそうです。

よく見るとただの紙なのです。

確かに印刷はよくできていますけどね。

裸の王様と同じ理屈です。

あれはただの紙だと誰かか言い出せば、その瞬間から1万円札には何の価値もなくなります。

お金の中でも特に紙幣は共同幻想の産物としか言えないのではないでしょうか。

おカネは現代社会の基準そのものです。

どの仕事につけばどれくらいの収入になるのか。

65歳以降いくらの年金がもらえるのか。

人生100年時代にどれだけの資金が必要なのか。

全て、世の中は金銭で換算するシステムになっているのです。

人生の勝ち組か負け組かなどという表現も収入の多い少ないで論じられることが多いです。

高校1年にもなればアルバイトを始める生徒も出てきますね。

最初はちょっとおっかなびっくりだったのが、次第にその収入に頼って遊ぶことも覚えたりします。

お金の持つ魔性に引きずり込まれていくというのが本当のところでしょうか。

誰もが疑うことのないおカネというものを冷静に観察すると、どうなるのかというのが主題なのです。

ニセガネをつくるな

この評論のポイントはホンモノのおカネを作るためにはニセガネを作らないようにすればいいというすこぶる単純な話です。

1つの例として幕末勤王派の佐土原藩は倒幕の資金のために、ニセの2分判金をつくったという話が紹介されています

その方法は実に細かく、幕府が発行した銀貨を元に、金を少しだけ混ぜ、その後形を変えて硼砂と硝酸カリウムを加え、最後にるつぼに入れてホンモノそっくりにしたのです。

佐土原藩はこのニセ2分判金を200万両も作ったのです。

とんでもない話ですね。

ところが大阪で両替商をしていた天王寺屋、鴻池はそんな手数をかけずに預かり手形をつくりだしました。

実はホンモノのお金と似ても似つかない紙切れがホンモノのお金になってしまったのです。

ここが最高に愉快なところです。

預かり手形を両替屋に持っていけば、だれでもそこに書かれている額の金貨、銀貨を受け取れるのです。

つまりこの預かり手形を貸し出しの返済の代わりとして受け取った人は、今度はそれを使って自分の借金の支払いをします。

ここに大きな意味の転換が生まれました。

金貨、銀貨の代わりであった預かり手形が、支払い手段そのものになってしまったのです。

いつの間にか、ホンモノのおカネに化けてしまったワケです。

ポイントはホンモノのおカネに似せてはいけないということです。

むしろ全力で違うものに変えてしまうこと。

それがホンモノに化ける近道なのです。

代替品

では現代はどうなのでしょう。

ホンモノのおカネもそうでない代替品のおカネも往来を跋扈しています。

約束手形、小切手はいうまでもなく、無数のカード、ビットコイン、ペイ、ネット決済となんでもあります。

特にコロナ禍の今、ホンモノのおカネのやり取りをするのは極力避けるようになってきました。

中国、韓国などでは現金をもって買い物をするということをしなくなっています。

ほとんどがカード決済、スマホ決済です。

日本にもペイが次第に浸透しつつありますね。

stevepb / Pixabay

しかし現金に対する信用度は他の国より格段に高いようです。

この先どのようになるのか、全く予想ができません。

特に低金利時代に入り、銀行は店舗を持たずバーチャル化しています。

ではペイに代表されるスマホ決済アプリはどの程度これから伸びるのでしょうか。

問題は利用してくれる顧客側にあるのか。

それとも導入する店側にあるのか。

競争は激しいです。

ほとんど潰しあいの様相を呈しています。

キャッシュレスで決済できる店舗、つまり「使える先」を増やすのは並々のことではありません。

1件1件担当者が回って説明し、同意を求めていくのです。

当然手数料も発生します。

どのくらいのメリットがあるのかわからなければ、店側も参加してはくれないでしょう。

このシステムが、金融を根本からかえることはありません。

今まであった流れの上に乗っているといえばわかりやすいですね。

カードの普及とそれほどに変わりはないのです。

営業活動の最先端は非常に地味なものです。

先には何があるのか

それでは現金を全く使うことなく、現金と同じ役割を果たすものは何でしょう。

それが「デジタル通貨」です。

時代はいよいよここまで来たのかもしれません。

それぞれの国の中央銀行の垣根を越えてしまうものもあります。

Facebookの「リブラ」や中国のデジタル人民元をはじめ、各国で「グローバル・ステーブルコイン」や「中央銀行デジタル通貨」などに注目が集まっています。

もうホンモノのおカネを超えたおカネが通用する時代になりつつあるのです。

ごく近い将来、デジタル通貨が世界を闊歩するのでしょうね。

ビットコインをはじめとした仮想通貨もデジタル通貨の一種です。

仮想通貨は既に国家の境を越えています。

法定通貨をベースとしないのです。

インターネット上で世界中の人と取引することができます。

国家の中央銀行が発行する中央銀行発行デジタル通貨とは全く違うものです。

仮想通貨は、特定の国家によって価値を保証されてはいません。

基本的にあらゆる国家や組織の管理を受けないために、需要と供給のバランスだけがその価値を決めます。

考えてみればすごい時代になりました。

ニセガネを作っていた時代がむしろ懐かしいでね。

今はホンモノもニセモノもありません。

全ては需要と供給が決めるのです。

暴落することもあります。

その反対に暴騰することもあるのです。

何を信じて生きていけばいいのか。

ホンモノのおカネとどう向き合えばいいのでしょうか。

考え出すと頭が痛くなってきます。

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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