社会への目
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は時事問題と小論文との関係を考えましょう。
試験に出題されるテーマはどれも難しいですね。
簡単に書けそうもないものばかりです。
どうしたら合格レベルに達するのか。
よくわからないから困るのです。
どの程度の内容を大学が要求しているのか。
受験生には一切知らされていません。
だからこそ悩んでしまいます。
最低ラインでもいいからなんとか合格レベルに滑り込まなくてはいけないのです。
今年はコロナの影響で受験戦線にも異常が起こっているとか。
以前なら狙った大学を諦めるという人もいるようです。
しかし学校は憧れて入るところですからね。
簡単に志望を変えてしまうのはどうかと思います。
石に噛りついても頑張りましょう。
ここへきていよいよ小論文の練習を始めたという人も多いのではないでしょうか。
最初はなんとかなるだろうと考えていた人も、実際やってみたら大変だったことと思います。
何を書いていいかわからなくなってしまった人もいるでしょう。
過去問をやってみましたか。
よくこれだけいろいろなテーマがあるなと感心したはずです。
コロナとの関連
今年はコロナ関連の問題がたくさん出るだろうと予想されます。
環境問題とからめる出題の仕方もありますね。
あるいは情報化社会との関係で論じさせるパターンも考えられます。
いずれにしても書きにくい問題が目白押しになりそうです。
ではどうしたら、そうした問題に対応できるのか。
出題者はみなさんの何をチェックしたいのだと思いますか。
もちろん、実力を知りたいのです。
しかし教科書で覚えた内容を確認するような試験はやらないでしょう。
もっとその先の伸びしろが気になるのです。
それは何か。
現実に対するコミットのレベルを知りたいのです。
極端な話、社会の現実に関心を持たない生徒はあまり欲しくありません。
受験技術だけに長じていても、先になって伸びないからです。
グローバル社会と言われて久しいです。
卒業してから、社会で活躍できない人材になって欲しくないのです。
当然、大学の存亡にも関わってきます。
卒業生の社会的評価が低ければ、大学もこれからの時代に生き残れません。
そこまで考えて試験をし、人材を探す努力をしているのです。
必要なのは現在進行形の問題に果敢にチャレンジし、少しでも可能な解決策を見いだそうとする意志力を持った学生です。
そのための基礎的な能力を持っているのかどうか。
それを知りたいのです。
どうすれば検証できると思いますか。
現実への関心をどの程度持っているかを探ればいいのです。
新聞、ネットなどに日々触れ、自分自身の問題として現実に向き合っているのかどうか。
そこが最も大切なポイントです。
例・同調圧力について
1例をあげましょう。
これは日本の社会がもっている同調圧力の問題です。
新型コロナウィルスの感染拡大が第3波と言われている昨今です。
何が問題になっているのでしょうか。
自殺者の推移がそれです。
2020年10月末の暫定数値が2158人となり、前年同期より40%も増加しています。
4月の緊急事態宣言以来、自殺者数は前年を下回る数字で推移していました。
それが7月以降、増え続けているのです。
リモートワークで満員電車での通勤がなくなり、職場のストレスが減ったためか、自殺者数も1時かなり減りました。
しかしそれはほんの僅かの期間でした。
その後、経済環境の変化で雇用環境が急激に悪くなっています。
特に非正規社員の中でも34歳以下の女性の完全失業率が大幅に平均を上回っているのです。
経済的に追い詰められ、自殺する人が増えてきました。
ここでポイントになるのは同調圧力です。
コロナで相互監視の目が厳しくなり、世間のルールからの逸脱を許さないという風土が助長されたと考えられます。
「自粛警察」と呼ばれる言葉にその全てが象徴されていますね。
地域や社内でコロナ感染者が出た場合について考えてみればすぐにわかります。
被害者であるはずの感染者が自ら謝罪しなければならない社会の実情がそこにはあるのです。
徹底的に隠す努力をしたものの、結局知られるところとなり、近隣に住むことができなくなったケースもあります。
退社を余儀なくされる場面もあったと聞きます。
1つの島にほぼ単一の民族が住んでいる国だけに、いざとなると同じ価値観に収束してしまう傾向が強いのです。
その結果、自殺に追い込まれる人まで出るとなると、これは大きな問題です。
例えば、このテーマに関連した出題を想定してみましょう。
その時に何をどう書いていいのかわからないなどいうことがないようにしておかなければいけません。
同調圧力という言葉とその背景を知っていれば、そこに集中して問題点を集約するということも可能です。
これがまさに時事問題を探る態度なのです。
どんなテーマにも肉薄する力
小論文の場合、何が出題されるのかは全くわかりません。
学校で習ったことをあらかじめ覚えておけば、点数がとれるといったタイプの試験ではないのです。
それだけに日常的な学習がどうしても必要になります。
それも机に向かってするだけでなく、あらゆる場面でアンテナを全開にしておかなければなりません。
自分の得意な分野の問題が必ず出るという保証は何もありません。
ある意味で全方位的な知識が必要になります。
その中でも社会の現実を冷静に見て取る視野の広さは大切です。
経済は苦手だからといって何もやっておかないと、突然出題された時、完全にお手上げ状態になってしまいます。
難しいのは承知の上です。
しかしあえて勉強を続けなければなりません。
その覚悟がなければ、小論文の試験は受けられないのです。
社会への関心をキープし続けてください。
試験当日の新聞やネット記事の中にヒントがあるかもしれません。
読みやすい内容だけでなく、時には歯の立たない分野にもチャレンジしておきましょう。
吉報をお待ちします。
最後までお読みいただきありがとうございました。