ピントのあった文章
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
勉強ははかどっていますか。
小論文の勉強は案外、曲者ですよ。
後でやろうと思って放っておくと、入試の頃になってどうにもならなくなってしまいます。
頭の隅にいつも小論文の存在を忘れずに置いておいてくださいね。
必ずどのような問題でも書ききるのだという信念を持っていましょう。
作文なんだからなんとかなるだろう。
今までも隋分書いてきたんだから、なんとかなるだろう。
そう思っているとしたら甘いです。
本当に書けないのです。
やってみればわかります。
試しに去年の問題を探して1度書いてみてください。
どこから書き出したらいいのやら、さっぱりわからないのが普通です。
最初は勢いこんで書いてみたものの、次第にどこへ結論をもっていけばいいのか、だんだん迷ってきます。
そのうちトンチンカンな文章になって終わりというパターンです。
とってつけたような結論を書いて、先生のところへ持って行くとどうなるか。
あちこち添削されて、戻ってきます。
日本語になってない。
主語がない。
このダラダラした長い文はなんだ。
意味が通らない。
論理の整合性がない。
語彙が貧弱だ。
書いてあることはだいたいこんなところです。
やさしい先生ならば、書いてあることがわからないワケではないけれど、言葉が足りないですねというコメントくらいでしょうか。
最初の数行で実力が
読んだ瞬間にこれはダメだと思う文章があります。
一言でいえば切れ味がない。
あまり研いでない包丁で野菜を切ったりすると、切り口がきれいじゃありません。
あれと同じです。
そんなことが本当にわかるのかと思うかもしれないです。
それがわかるのです。
最初の数行でほとんど実力が見えます。
たくさん読んでいると、それくらいのことはすぐにわかるようになるのです。
プロの目というのはそういうものです。
魚屋さんでも八百屋さんでも、新鮮ないい素材を見分ける目を持っています。
経験というのは怖ろしいものです。
採点者はどこをみるのか。
最初に「てにをは」です。
助詞の使い方が正確であること。
これでほぼ国語力の基本をみます。
主語と述語が対応していれば、まずOKです。
第一関門は突破というところでしょうか。
そんなにひどいのか。
ひどいです。
自分では名文のつもりなのかもしれませんが、どれが主部でどれが述部かわからないような文章がたくさんあります。
勿論仕事ですから読みます。
しかしつらいですね。
鮮明に書くには
遠近法をご存知ですね。
あの視点です。
どこから見たのかがはっきりしていないと、遠近法は崩れます。
この書き手はどこにいるのか。
どの立場で書こうとしているのかということを明確に意識し続けることです。
あっちの意見も述べた。
こっちの意見も書いた。
それではあなたはどの視点からこの文章を書いているのか。
客観的に見た時、どこにいるのかがわかりません。
どっちの位置から書こうとしているのか。
それがさっぱり見えないのです。
このタイプの文章はダメですね。
ピントをあわせてください。
そのためにはどうすればいいのか。
提出された問題に対する冷静な態度が必要です。
事実の内容をきちんと把握していないと、どっちつかずの文になります。
読解が甘い。
解釈が中途半端。
さらに問題を深掘りする能力に欠けている。
これではどうやっても合格答案にはなりません。
思考の遠近法
どの問題が近いのか。
どの論点が遠いのか。
課題文をじっくり読みながら、見極めてください。
この時間が最も大切です。
深い意味を持ちます。
ここで手を抜くと中途半端な文で終わってしまうのです。
いろいろな要素が課題文には示されています。
必要なのは違いです。
似たところは違いがわかれば、逆にすぐ見えてくるものです。
全体の構成を手前から遠くへ分析していくこと。
自分にとって近い問題は何であるのか。
最も遠い問題はどれか。
喫緊のテーマは何か。
そのためにはどう解決すればいいのか。
必死になって頭の中を回転させてください。
必要なのは論理力です。
いいかげんな検証で今まできた人は、ここで挫折します。
分析できません。
つまり問題の遠近がみえてこないのです。
どれが最も大切なのかということがわかりません。
ギブアップですね。
とにかく比べることが基本です。
比較する中で、テーマが見えてきます。
それを深く見つつ考えることです。
国語力のあるなしがはっきりわかります。
小論文は怖い試験です。
採点していると、しみじみそう思います。
文章力は自然と身につきます。
考える力に正比例します。
いいカメラをもち続けてください。
ピントをあわせるための方法論を身につけたら勝ちです。
この力は生涯にわたって有効です。
いい機会です。
頑張って身につけてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。