【ジェンダーフリーと無縁】女性の姿が見えないパキスタンという国家

ノート

女性の地位

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回はかつて読んだ本の感想を書かせてもらいます。

この本は数少ないパキスタンの女性の様子を描いたものです。

本当にこんな国があるのかと思いました。

しかしこれが現実なのです。

SDGsの実践目標などを読んでいると、どの国でもジェンダーフリーにはかなり前向きの様子が垣間見えます。

しかしパキスタンではそれもほんのわずかです。

ぼく自身、この国を訪ねたことがないので、実感がわきません。

しかし本が出版された頃と、現在もほとんど状況に変化はないようです。

その事実にただ茫然としてしまいます。

パキスタンは、北はヒマラヤ山脈の西端から南はアラビア海まで、豊かで多様な自然環境に恵まれた美しい国です。

4000メートルを超える山や川の流れる美しい自然に恵まれているのです。

人々の90%以上はイスラーム教徒です。

基本は聖典クルアーン(コーラン)の教えが基盤です。

首都はイスラマバード。

耳にしたことがあるでしょう。

しかしアフガニスタンもパキスタンも、ほとんどの日本人にはなじみがありません。

観光地としてはモヘンジョダロの遺跡やラホールの城塞などの世界遺産があります。

親日家も多い国です。

しかし治安はあまりよくありません。

テロや強盗事件が多発しています。

外務省のホームぺージを見ると、観光としての渡航はすすめていません。

イスラム過激派

パキスタンの各地でイスラム過激派勢力によるテロが多発しているのです。

アフガニスタンとの国境地帯では軍や警察等が標的になっています。

外国人を狙ったテロも頻発しているほか、ラホール市等の都市では治安機関や宗教施設等を狙った爆弾テロ事件が発生しています。

これだけ読めば、誰も怖ろしくて渡航しようなどとは思わないでしょうね。

情報も多くは入ってきません。

パキスタンの日本大使館では「宗教行事や集会が行われている場所には、決して近づかない」ようにと指導しています。

攻撃の標的となりやすい場所はどのようなところでも立ち寄らないこととあるのです。

政府機関、報道機関、ホテル、ファースト・フード店、レストラン、マーケット等です。
いかがですか。

日本人でこの国へ渡航するのは、殆どが商社を中心とするビジネス関係の人になってしまうのも、ある意味当然でしょうね。

なかにはフリージャーナリストなどもいます。

最近は安全な取材を標榜するメディアが増えています。

あえてテロの標的になるようなところへ派遣するだけのリスクを、会社としても背負いたくはないでしょう。

元々イスラム教という宗教自体が日本人にとってはあまりなじみがありません。

異教です。

ぼく自身、代々木上原の東京ジャーミーなどを訪ね、礼拝の様子などを見学したこともあります。

マレーシアではメッカへ巡礼したことのある敬虔なイスラム教徒の家へ泊めてもらった経験もあります。

しかしパキスタンについては何も知りません。

そこでこの国をを紹介した本、『女性の見えない国』(松山章子・朝日新聞社刊)を読んでみました

筆者はユニセフのイスラマバード事務所で企画広報担当官として活躍した人です。

随分と以前に出版された本ですが、ほとんど時はとまったかのように、今も似た状況のようです。

パキスタンという国

この本のタイトルはパキスタンを実に的確に表現しています。

時に見かけるテレビ報道などを見ても、町にほとんど女性の姿はありません。

たった1枚の写真を撮るのにさえ、夫の許可が必要なのです。

信じられるでしょうか。

大半の女性は1日中、家の中にじっとしています。

外出はいっさい許されません。

男女差別という言葉を使うことさえためらわれます。

超男性優位社会ということが言えるでしょう。

パキスタンの識字率は低く国民全体で60%前後ですが、女性の場合50%にまで落ち込みます。

学校教育を受けていない女性がいかに多いか、ということを示す数字です。

小学校の3年生まで行ければ十分ということです。

その理由の一つが、8才を過ぎる頃から、むやみに男性のいるところへ行ってはいけないという考え方があります。

つまり女子は男性の先生が教える学校には行けないのです。

元々女性が先生になることなど考えられませんから、いつまでたってもこの悪循環が続くわけです。

女性はとにかく早く結婚し、たくさんの子供を産むことを義務づけられます。

乳幼児の半分以上が小児破傷風などで死んでしまいます。

信じられないことにへその緒を切った後にかまどの灰をかぶせたりもします。

カミソリ、はさみが汚れていることも病気の原因の1つです。

パキスタンでは妊婦に予防注射をするということそのものが難問なのです。

というのも予防接種を行う医者や保健婦が男性であれば、殆どの女性は注射を拒みます。

男性に二の腕を見せるということなど考えられません。

だいたい女性が医者にかかるという習慣そのものがあまりないのです。

特に未婚の女性が医者にかかるということになると、それだけで妊娠したのではないかと男達に噂されます。

それを恐れて彼女たちは医者にかかることもしません。

民間伝承

ある程度の年齢になっても夫が代わりに病状を告げ、薬を処方してもらうというのが普通です。

その薬も民間伝承のものが殆どで、効果には疑問が残ります。

ユニセフは保健、衛生、栄養、スラム開発、識字教育、職業訓練をプロジェクトの柱に据えています。

しかしどれ1つをとってみても、難問が山積しているのは明らかです。

この国では女性の誕生はあまり歓迎されません。

とにかく男をたくさん産む女性が理想なのです。

そのために15人も続けて出産するということもあるそうです。

貧しいから子供を産むのです。

労働力として、あるいは親の老後の保障として。

また神からのさずかりものである子供の誕生を制限することなど、絶対に考えられません。

しかし女医さんのところにだけは避妊注射をしてもらいにくる女性がいるそうです。

彼らは夫や家族にも告げずにひっそりと来診します。

パキスタンはもともとインドの一部でした。

宗教の違いが原因で1947年に分家独立しました。

しかし元々は兄弟のような関係にあります。

つまり現在も社会の深部にカースト制度が残っているのです。

かつてブットという女性の首相が統治としていた時代もありました。

絶対的階級社会では女性といえども、高位の家の娘として生まれ落ちれば、男兄弟とほぼ同等の特権を享受することができるのです。

女性の姿を全く見ることのない町の中を、男達はシャルワール・カミーズと呼ばれる白い民族衣装を着て歩いています。

また極彩色の乗り合いバスも不思議な風景です。

隣国アフガニスタンとともに、パキスタンは男性だけの国家です。

宗教者会議の様子などもそのことを強く物語っています。

この国は今後も変化しないのかもしれません。

しかも貧富の差が激しいのです。

女性労働者の割合が増加傾向にあるとはいえ、その数は依然として少ないのが現状です。

さまざまな社会経済的な制約により、女性の労働市場への参加が妨げられているのです。

特に社会、経済、政治、法律の面で女性は非常に軽視されています。

パキスタンでは、女性が教育を受け、仕事を得て、財産を所有する機会が男性と比較して非常に少ないのです。

あなたも機会があったら、この国の様子を調べてみてください。

SDGs達成への道がいかに困難かがよくわかると思います。

この情報が過去のものであることを祈ります。

それくらい、女性の地位の低い国が世界にはまだ存在するのです。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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