【小論文・行旅死亡者3万人の時代】無縁社会の背景を文章にまとめる

小論文

無縁社会の現実

みなさん、こんちには。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

あなたは行旅死亡人という言葉を聞いたことがありますか。

身寄りが判明せず、引き取り手のいない死者のことです。

遺体を引き渡す遺族や関係者が見つからないのです。

近所付き合いがないため、誰にも看取られること亡くなっていくのです。

その数が年間3万人と聞いてどう思いますか。

この数字は自殺者の数よりも多いのです。

現代社会の一面ですね。

誰も知らないところで人が亡くなり、その現実を誰も気にとめません。

人間関係がいつからこのように希薄なものになったのでしょうか。

社会福祉関係の学部では、よくこのテーマが出題されます。

そこに今日の問題が凝縮されているからです。

課題文に過去のできごとの一端が示され、今後の福祉のあり方を問うという問題がそれです。

この話題はNHKが2010年に「無縁社会」という切り口で問題提起をして以来、社会的に認知されるようになりました。

死後、その家族や親族と連絡をとることができず、行政が全ての所持品、財産の処分を行います。

業者が故人の部屋の片づけなどを専門に行うのです。

さらに自治体が遺骨を数年間保管し、引き取り手があらわれない場合、無縁墓地に合葬されることになります。

全てが事務的に処理され、費用は全て税金から支出されるのです。

なぜこのような社会になってしまったのでしょうか。

ここが1番の問題です。

コミュニティの喪失

キーワードはコミュニティです。

日本人の暮らしの形が劇的にかわったのは2000年以降だと言われています。

戦後の高度経済成長の時代は、衣食住を誰もが日常的に享受できる社会でした。

それが不可能だとしても、家族や親戚という単位で、なんとかやりくりをしていたのです。

社会全体が、生きていくことを前提として、前を向いていたともいえます。

ところが現代はどうでしょうか。

ニートとか引きこもりなどという言葉がごく自然に飛び出してきます。

仕事をしない人、結婚をしない人も別に珍しい存在ではありません。

お互いに干渉をせず、個人が自分のプライバシーを保持しながら生きていくという社会に変わりました。

つまり1つの価値観に狭められることはなくなったのです。

特に都会ではその傾向が強いです。

無理に干渉をせず、自分の生きたいように生きるということが悪いワケではありません。

個人主義が進めば、当然そのような生き方が出てくるに違いないのです。

しかしそれがある一線を越えた時、何が起こるのか。

まさに孤立死の出現です。

隣の住人がどこの誰なのかを知ることはありません。

たとえ、その人に親戚や知人がいないからといって、干渉することもないのです。

現代社会はある意味で、個人責任の社会に変容しつつあります。

個人が働かずに老後をどう過ごすかということまで、面倒をみる気はなくなりました。

当然、社会福祉の問題と複雑にからみあってきます。

そのような個人にまで、福祉行政は立ち入らなければならないのか。

逆にいえば、本人が努力をしなかったのに、その尻拭いまでしなければならないのかという問題です。

家族と都市環境の変化

近年、世帯規模がますます小さくなっています。

少し前までは3世代同居があたりまえでした。

しかし今では世帯規模が小さくなり、夫婦単位になりつつあります。

当然老人世帯は夫婦2人だけで暮らすというのが当たり前になってきました。

伴侶が亡くなれば、1人暮らしになる可能性が強いのです。

資金的に余力があれば、高齢者用の住宅に転居することも可能でしょう。

しかしそれができない場合は、独居生活になりがちです。

ましてや子供がいない場合はどうなるのか。

容易に想像ができますね。

最近は非婚や、パラサイトシングルのケースも多いのです。

独居老人の世帯が増加するのは誰でもが予想できます。

さらにいえば、都市環境の変化です。

都会においてはマンション暮らしが当たり前になってきました。

防犯上は大変に便利ですが、高層化やワンルーム化によって、住人同士の意思疎通が満足にできなくなりつつあります。

ネットなどでの消費行動を多くしていると、他者との関わり合いもますます減っていきます。

つまり隣人がどのような人かもよく知らないということになります。

近所付き合いの仕方が劇的にかわりました。

このようなシステムの変化が多重的に加わって、相互の関連性を崩していったと考えられます。

カード破産、アルコール中毒、リストラ、フリーター問題など、いくらでもその原因となる要因が社会には転がっているのです。

孤独死がけっして遠い問題ではないということが理解できたでしょうか。

福祉の問題

小論文ではこれらのテーマを扱う問題が出題されます。

たとえば、過去問をチェックしてみてください。

いくつか具体的な設問を書き上げてみます。

試みに解答をしてみてください。

問1 孤立死を生む背景について、500字以内で記しなさい。

問2 いわゆる「無縁社会」において価値観の揺らぎとはどのようなことを具体的にさすのですか。600字で書きなさい。

問3 現代社会における多様化する福祉課題への対応について、あなたの考えを具体的に800字以内で述べなさい。

どうでしょうか。

戦後の当たり前が、もうあたりまえではないという冷厳な事実がつきつけられています。

あまりにも多様な価値観が氾濫し、それを収束することは不可能になっているのです。

家族の在り方や、近所付き合いの仕方なども全く以前とは違いますね。

高度経済成長のような前向きの時期にはなかったということも大きな現実です。

それが大きく変化する要因は、人々の価値観の多様化につきます。

その論点を冷静に整理し、分析していかない限り、この問題への的確な解答はできないでしょう。

課題文を正確によみとることはもちろんです。

しかしそれ以上にあらかじめ、現代の持つ病弊をきちんと認識しておくべきなのです。

孤立死という言葉だけが先行していますが問題はもっと根が深いです。

自分自身で、関連の本を読み、ネットなどの記事を探ってみてください。

どこに根本的な問題があるのかがわかってくるはずです。

その知識があるのとないのとでは、理解の度合いが全く異なります。

勉強を続けてください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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