出題者の意図
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は昨年の都立高校の入試問題から小論文のテーマを論じてみましょう。
特に難しい知識がいるワケではありません。
高校によっては、新聞や評論などを丹念に読み込んでおかないと解答できないものもあります。
しかしそれはわずかです。
過去問をみればどのような傾向なのかはすぐにわかります。
推薦入試を狙っている人は、必ず過去に出題された問題をチェックしてください。
通常の入試ではけっして突飛な問題がでることはありません。
安心してください。
ただし作文とは明らかに違います。
必ずきちんとした結論にまで導かなければなりません。
構成力も必要です。
なるほど、この結論ならば無理はないという論理の整合性が必要です。
その意味で、ただ嬉しい、楽しいといった過去のできごとや感想を書く作文とは全く違います。
明確に認識しておいてください。
昨年出題された問題を実際にみてみましょう。
ちなみに推薦入試は調査書、集団討論、小論文の得点の合計で合否が決定します。
学校によってその得点の比率も違いますので、十分な注意が必要です。
コロナ禍の中、集団討論をとりやめ、個人面接に切り替えた学校も隋分ありました。
今年はどうなるのでしょうか。
日々の情報から絶対に目を離さないでくださいね。
課題文
ここに取り上げた高校のケースでは最初に課題文がありました。
後半の一部だけ転載します。
——————————–
長く生きてきて、人生は思うどおりにはいかぬものの、思いどおりにならぬから人生のドラマがあると思う。
思いどおりの成功より、思いがけぬ失敗。
それはむだのようでも、そのむだを貯金としてゆとりが生まれる。
むだをなくすのではなく、失敗のむだを生かせるのがゆとりだ。
——————————-
実際の問題はもう少し長いものでした。
しかし内容はここにあるので十分だと思われます。
この文章は数学者、森毅のエッセイからとったものです。
次に問題の指示があります。
最大のヒントです。
目を凝らして一字一句を見逃してはなりません。
「失敗から学んでその後うまくいったこと」はどんなことですか。
具体的に挙げ、その経験を学校生活にどのように生かしていくかを書きなさい。
制限字数は501字以上~600字以内です。
書き出しや改行の際の空欄、句読点、カギかっこなども字数に換算します。
ポイントをおさえる
解答のためのカギをまず押さえましょう。
① 失敗したことを具体的に示す
② 経験を学校生活に生かす方法は何かを書く
③ 制限字数とその他の約束を守る
この3点です。
これをはずすと大きく減点されます。
まず第1に守るべきことは③の字数とその他の約束です。
改行、句読点、カギカッコなどを字数に換算するとあります。
これを見逃してはいけません。
基本は制限字数の9割以上です。
この場合、550字以上は書かなければいけません。
字数が少ないということは実力がないのと同じです。
個々の失敗に関しては特に学校の問題にかかわらなくてもいいと思います。
しかしそれが学校生活に生かされるということが論文の前提です。
失敗と一口にいっても、その受験生のおかれた環境によって大きな違いがあります。
中学生の場合、大きな失敗をしたことがあるのかといえば、それほどのことはないと考えられます。
家庭内の細かな状況を書き込まなければわからない失敗談では採点者も大変でしょう。
文章にまとめるのも厄介です。
しかし誰もが書くようなありきたりの失敗では、十分にアピールできるかどうか。
やや飽きられる可能性もあります。
他の人とあまり変わり映えがしないというのであれば、そこから得た教訓の目新しさに着目する必要があるでしょう。
具体的に中学生がする失敗とは何か。
今はなるべく子供が失敗をしないように、親や先生が先回りしてガードしてしまう時代です。
それだけに大きなテーマを狙うのは難しいでしょうね。
学校にまつわるもの、家庭生活にまつわるものの2つに着目するのがいいでしょう。
学校といえば、部活動、委員会、勉強、さらにそれと先生との距離も大きなポイントです。
友人関係などで失敗したことはないですか。
あるいは先輩と後輩との間でのトラブル。
家庭でいえば、親との関係、兄弟姉妹との関係が1番大きいでしょうね。
社会との関連でいえば、高校生ならアルバイトも考えられます。
しかし中学生ではちょっと無理でしょう。
やはり友人関係のトラブルが1番大きいのではないでしょうか。
私立中の受験で失敗したなどという、学業上の問題も考えられます。
試験でいえば、得点をとれず、希望の高校への合格が果たせそうもない現実も考えられます。
いずれにせよ、多くの受験生がそれほどに特殊な体験をしているとは思えません。
トピックスの選び方
結論からいえば、どの失敗談でもいいです。
ただし1つに絞りましょう。
字数との関係があります。
ダラダラ書いても意味がありません。
ここは要約力を示す場です。
どのような失敗ががいつどこでどんな形でなぜ起こったのか。
その時に何を感じ、どう対処したか。
まさに新聞記事の書き方をまねしてください。
5W1Hの活用です。
字数がわずかですから、まとめ方が悪いと構成力で減点されます。
ここまでが①の内容です。
具体例がなければ評価は下がります。
なるべくはっきりと書きましょう。
曖昧な表現でしか書けない内容のものはNGです。
ポイントは次です。
その失敗を学校生活にどう生かしたいのか。
これは中学校でのその時の状況でもかまいません。
しかしできたら高校に入ってからどうしたいのか。
希望を書いてまとめた方がいいです。
採点者はその高校の先生です。
どういう生徒が入学してくるのか、楽しみにしています。
是非、内容のある新しい生活への希望とともに、失敗の反省点を生かしてください。
それが成就することで、より豊かな学校生活ができるという確証を採点者に与えてください。
失敗から学んだ内容が普遍的なものであればあるほど、展開が広がります。
それだけ合格への可能性が確かなものになります。
入試の小論文はけっして難しいものではありません。
ただし論理的にきちんとしたまとまりが必要です。
練習を続けてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。