いじめが最多
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、ブロガーのすい喬です。
今回は少しあだ名の話をさせてください。
つい先日のニュースを読んでなんとも言えない気分になりました。
それによれば全国の小中高校などで2019年度に認知されたいじめの件数が前年度より6万件も多かったというのです。
全部で61万件を超えて過去最多とか。
ここ6年で3倍増だそうです。
なかには大変深刻なケースもあり、自殺にまで追い込まれたケースもあるのです。
小学校が約5万件増え49万件弱。
中学校は約11万件。
高校は2万件。
いじめの内容は冷やかし、からかい、悪口が最も多いのです。
最近の傾向ではパソコンやスマホなどでの誹謗中傷が増えているとか。
特に高校生にとってスマホは今や必須のアイテムですからね。
SNSなどを利用して誰にも知られずに匿名で相手を傷つけます。
その結果、小中高生の自殺は317人を数えました。
この数字を多いとみるか少ないとみればいいのか。
明らかにいじめが原因と考えられるのは10人だそうです。
一言でいえば子供は大人の鏡です。
大人たちの世界にも陰湿ないじめが広がっていると考えた方がいいんじゃないでしょうか。
それがいつの間にか、子供の世界に伝播していく。
あまり考えたくはありませんけど、なんとなくそんな気がします。
数字でみると小学校が突出しています。
子供はストレートですからね。
大人のようにオブラートでくるんで陰に回ってということがありません。
自分の感じたままを直接相手に吐き出します。
それだけに被害の内容も深刻です。
言葉は暴力です。
なんの気なしに使った表現でも、相手を精神的に潰してしまう可能性があります。
怖ろしいことです。
あだ名禁止
そんなことをぼんやり考えていたら「あだ名禁止」の話を目にしてしまいました。
学校でのあだ名禁止が話題となっているのだそうです。
いじめにつながるというのがその最大の理由です。
あだ名禁止の学校が増える傾向にあるのだとか。
いじめの方法として冷やかし、悪口、からかいがあると書いてありました。
まさにあだ名はそのどれにも当てはまりそうです。
一般的にあだ名になりやすいのは身体的特徴や個性などです。
なんとなく相手を貶め、バカにしようとする気持ちがあるのではないでしょうか。
元々、あだ名という表現は「あだ」の名前ということです。
試みに辞書をひくと、あだ名とは本名とは別に、その人の容姿や性質などの特徴から、他人がつける名とあります。
元々、「あだ」という言葉にあてられる漢字は仇・敵・賊のようなものでした。
その意味は①敵。外敵②かたき、仇敵③害、④恨み、恨みの種といったところです。
もっと昔にさかのぼれば「あだなり」という表現もあります。
これは①はかない、もろい②誠実でない、浮気だ③疎略だ④無駄だ、無用だといったようなものです。
どうも元々いい意味ではなさそうですね。
ケンちゃんはあだ名なのか
身体的な特徴をわざとつけて相手をからかうのは論外としても、ケーキ屋ケンちゃんのように名前にちゃんをつけるのはいいのでしょうか。
これもあだ名の部類に入るのでしょうか。
生徒に聞いてみると、首をかしげていました。
あまり気にしたことがないようです。
普通に名前で呼び合っているというのがごく日常的な風景なのでしょう。
あだ名そのものの文化がいじめなどの意図的なものを除いて、消えつつあるのかもしれません。
教員として長い間生徒とつきあってきましたが、いろいろなシーンがありましたね。
ぼくの方からは苗字をそのまま呼ぶということが多かったです。
親しくなるにつれて「さん」や「くん」をつけなかったです。
逆に非常勤講師などをしていた時は必ずつけていた記憶があります。
「さん」「くん」をつけるとどこがよそよそしい気分でしたね。
しかしはっきりとした線引きは自分でもしていません。
最近の学校の授業風景などを見ていると先生方は名字に「さん」をつけて呼んでいるようです。
生徒同士は呼び捨てだったり、「ちゃん」がついていたりさまざまです。
男子同士はどうなのでしょう。
「くん」をつけて呼びあうと少し関係が遠ざかるような気がしないでもありません。
あだ名で呼んでいるケースはほとんど耳にしないです。
どうして学校であだ名禁止の動きが広がったのでしょうか。
学校での「あだ名禁止」の動きは、いじめ全盛の1990年代後半から見られ始めたといいます。
被害者の言葉に必ず出てくるのが「あだ名で呼ばれて嫌だった」という内容です。
教師も特定の生徒に対してあだ名が使われているかどうかに注意するようになりました。
いじめの温床とみてとったのです。
さん付けの普及
最近は男女混合名票が主流になりつつあります。
以前は男子が1番から、女子がその後ということになっていました。
今では全てあいうえお順です。
卒業式の呼名もこの順序で行われているところが多いようです。
それと同時に普及し出したのが男女ともに「さん付け」になってきたことです。
この背景にはLGBT(性的少数者)の主張が拡大したことがあります。
ジェンダーフリーの考え方が一般的になったあたりから始まりました。
「さん付け」で子ども同士のトラブルが減ったという教師の報告もあります。
男子か女子かで「さん」と「くん」という呼び方の差をつけるということが、そもそもいけないという発想なのです。
考えてみると、随分複雑な時代になったもんです。
あだ名禁止に関しては今でも意見がわかれているのも事実です。
しかし流れは自分が呼ばれたいニックネームがあれば、そちらの方へということのようです。
アバター感覚とでもいえばいいのでしょうか。
SNSなどの世界では多くの人がアカウントのハンドルネームを使っています。
学校を離れると、全く別の人格を持っているというのが現実です。
コミュニケーションを円滑にするためには、自分からむしろ別のニックネームを持つことが多いようです。
親しいSNS友達の間では、それで通用するという不思議な関係もできあがっています。
オンラインゲームの中だけで通用する名前が気に入っているという人も多いのです。
これからは自分で呼んでほしい呼び名をニックネームとして、自ら提案するという時代になっていくのかもしれません。
明らかに学校のレベルを超えて、現実はバーチャル世界へ走り出しています。
学校では「さん」付けで呼び合い、家に帰ったらアバターのハンドルネームになる。
なんと複雑な世の中でしょうか。
確かに「さん付け」をさせれば喧嘩が減るという事実もあるのでしょう。
しかし小学生や中学生がさん付けで会話をしている風景を想像すると、なんとなく気持ちの悪さを感じてしまうのも事実なのです。
皆さんはどう考えますか。
最後までお読みいただきありがとうございました。