【小論文の戦略】複眼的思考が批判的な論理力とリテラシーを鍛える

小論文

複眼的であること

みなさん、こんにちは。

小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は小論文を書くための論理力をどのようにしたら育てられるのかについて考えてみましょう。

どんなテーマが出てきても、失敗せずに最後まで書き切るにはかなりの力がいります。

それをどのようにしたら培うことができるのか。

文章を書く時にいつも必要なもの

それはズバリ複眼的思考力です。

ものごとをパターンで捉えないことです。

誰でも1つの型に置き換えて考えればいいと言われれば、その方が楽に違いありません。

しかし小論文において、その方法は通用しません。

絶対に裏があると考えてください。

こちら側からみれば、違った事実があると考えるのが小論文の鉄則です。

子供はつねに正面から事実をみます。

しかし大人はそれだけでは生きていけません。

あの人はこんなことを論じているが、これには別に言いたいことがあるのではないか。

論理的に考えるということは違った価値観をそこに導入することです。

議論のための接点を探すことです。

多くの人の前で自分の論理を披歴できるか。

それができなければ、ただ人の言ったことを鵜呑みにして、賛成か反対かを答えるだけになります。

つねに批判的に考えてください。

多くの人がそこにいたとして、コミュニケーションをとる場合、どこが同じでどこが違うのかを瞬時に読み取る作業が必要です。

小論文も同じこと。

必ず裏を探るという態度を忘れてはいけません。

ロールプレイの技

それではどうしたら裏がみえてくるのでしょう。

1つは直感です。

しかしこれは鋭い感受性と論理力をつねに磨いておかないと、うまく機能しません。

もう1つの技はいくつもの立場に立つことです

そこで論じられていることが例えば少子高齢化だったとしましょう。

必ずそれぞれの登場人物になりきるのです。

その話題には誰が出てきますか。

子供、老人、母親、父親、青年。

老人にしても介護を必要としている人とそうでない人にわかれるかもしれません。

さらに職業ではどうでしょうか。

介護士、医師、看護師、教師、保育士、会社員、経営者。

それぞれの立場で見えてくる風景は全く違います。

当然、各々の意見には歴然とした食い違いがあります。

その立場を利用するのです。

これだけで説得力がぐっと増します。

今まではたった1つの視点だけから論じられていた話が、複眼的になり、厚みと広がりを持ちます。

それだけ内容が豊かになるのです。

自分が考えていた世界の構図が、ほんのわずか視点をずらしただけで、全く違うものになります。

当然意見にもズレがでます。

そこが大きなポイントです。

自分の立場

複眼的な思考をしなかった少し前なら、単純に賛成か反対かを言えばそれで済んだのかもしれません。

しかし話は一気に複雑になります。

誰かにとっていいことは、別の人にとって少しもいいことではなくなるのです。

老人の年金問題1つを考えてもそうでしょう。

ずっと今の基準で支払いを続けていくためには、勤労者が将来自分がもらえるかどうかの不安を抱えながら年金を納め続けなければなりません。

もちろん少子化の影響は深刻です。

以前なら準備金もこの額で足りたものが、明らかに高齢者の人口増加にともなって不十分なものになります。

当然、勤労者たちの不安や不満が増すことは間違いありません。

geralt / Pixabay

長寿を祝っていた段階を超えてしまうと、多くの問題が一気に噴き出してきます。

健康保険や介護保険、さらには多くの社会資本が老人に偏りすぎているという課題も出てきます。

子供が少なくなることで、社会の構造がいびつになり、国家の生産性が一気に低くなる予想もあるでしょう。

今後、国家の形が急速に変化していくのは誰の目にも明らかです。

しかしその変化も誰の目から見た場合かによって、大きくかわります。

子供の視点、あるいは男性、女性、さらに高齢者本人。

全ての人の視点からみていけば、いくらでも書くことは増えるはずです。

ただしそのままダラダラと内容を垂れ流しても論文にはなりません。

自ずから自分の視点をどこかに決めなくてはなりません。

それが複眼的思考の最後の方法です。

立ち位置を明確にすることで、文章が際立ちます。

多くの人と議論をするつもりで文章をまとめてください。

必ずそこに接点がみえてきます。

それが公共的リテラシーです。

その力がなければ、とても小論文に立ち向かうことはできないのです。

チャプターの意識を

文章を書くということは、つねにもう1人の自分を創造することです。

どうしても熱中してしまうと何を論じているのかわからなくなることがあります。

つねにチャプターを頭の中に入れて書き込んでください。

自分は今全体のどのあたりを書いているのか。

geralt / Pixabay

もうそろそろ結論に入っていいのか。

まだ具体例を述べていないが、それはどこへ書き込めばいいのか。

あるいは自分の経験の一部分を入れようと思ってはいたものの、ここでは意味をなさないのでカットした方がいいとか。

さまざまな判断が出てくると思います。

書いている時に、そのすべてを冷静に見守りながらきちんと最後の結論にまで持っていければ、それは立派です。

しかしなかなかそうはいきません。

極端な話、空中で分解してしまうのです。

自分が導いていこうとした結論にどうしても論理的に引っ張りきれないということもあります。

どうしたら防げるのでしょうか。

必要なのはチャプターの概念です。

目次をつねに意識することです。

そうすればとんでもないミスは少なくなります。

どんなに言葉が次々と浮かんでも、それをすぐに文章化するのではなく、必ずもう1度頭の中の地図に押し込んでください。

自分の文が今、全体のどこにさしかかっているのかを冷静にみてとる力。

これが論文を書く時の実力です。

文章は一朝一夕にうまくなるものではありません。

しかしここに示したような方法論を駆使すれば、かなりのレベルまでいきます。

言葉の勉強も続けてください。

新聞も読んでください。

そうしたことの後に、複眼的な思考が効果をあらわすのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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