文系入試にも数学脳が必須になる時代がやってきたという変化の予感

学び

入試システム変革

みなさん、こんにちは。

進路指導経験40年の元高校国語科教師、すい喬です。

今年は大変な年になりました。

2020年度から入試のシステムが大幅に入れ替えられることが発表されました。

しかしいまだに未定のことも数多くあります。

いったん旗をあげてしまったこともあり、政府も細かい点で対応に苦慮しているようです。

その一番が大学入学共通テストの際、実施される英語外部試験です。

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残り1年と少しを残したまま、次々と発表されていく内容はかえって受験生の不安をあおるだけの結果に陥っています。

特に英語の試験をどの業者がどこで実施するのかということが報道されていません。

しかしその間にも英検などの業者は予約を先行させています。

実施場所が遠い場合、どのように受験機会を平等化するかなどということはまだ先送りのままです。

さらには実施される試験のレベルをどう判定し、どの大学が実際にその結果を合否に反映させるのかも、まだ決まっていません。

国公立はかなりの大学が利用するようですが、私立大学は完全に様子見です。

さらに国語、数学などの問題にも記述式を導入すると発表したものの、採点者をどのように集めるのかなど、未定のことばかりです。

短期間に評価基準を揃えて採点するということは、想像以上に難しい作業です。

案の定、数学は初年度は無理ということで、記述式の見送りという方向に向かっています。

現在の高校2年生にとっては、どのように勉強したらいいのかという悩みに加えて、私立大学のなかには独自の方向性を打ち出すところも出てきました。

それが早稲田大学です

何が変わったのか。

数学必須

2021年の試験から現在実施されているセンター試験に代わり、大学入学共通テストが実施されることは先ほど書きました。

ここでは数学が必須科目となります。

しかしそれは国公立大学の話だろうと思っていたら、早稲田大学が政治経済学部、国際教養学部、スポーツ科学部でこの大学入学共通テストに参加することを表明しました。

今まで文系の学部を受ける場合は、数学が必須ではありませんでした。

現在は外国語、国語の他は地歴、数学など数科目から選択でとればよかったのです。

むしろ数学が苦手だから、私立文系に進むという流れが一般的でした。

それを一気に方向転換することにしたのです。

これまでは数学が苦手でも文系科目を頑張れば、早稲田大学政治経済学部に入れました。

それが2021年からは不可能になるのです。

文系といえども数学は必須です。

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さらに国際教養学部という外国の文化を多く見てきた学生にまで、数学を要求することになりました。

インパクトはかなり大きなものがあると予想されます。

なぜ早稲田大学は大学入学共通テストを実施することにしたのでしょうか。

文部科学省は「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」を学びの3要素として定めています。

このうちの「思考力・判断力・表現力」を養うのに数学という科目が適していると判断したからなのです。

これからは人工知能の時代です。

この質問にはこの解答といったような画一的な問題はすべてコンピュータが判断する時代なのかもしれません。

むしろ、頭の柔らかい知的な数学脳をもった学生に来てほしいという大学側の考え方が前面にでた判断ではないのでしょうか。

今日大学では数学を使わない学問はほとんどありません。

数理統計をはじめとして、微積確率などがあらゆる分野に進出しています。

大学に入ってから新たに学ぶよりも、ある程度素養のある学生をさらに鍛えたいとする大学側の考え方がよく見てとれます。

大学の判断

数学導入の裏側には幾つもの判断基準があったと言われています。

当然、これによって受験生の数が減ることも予想したでしょう。

どの大学も本音をいえば、数学脳を持った学生を文科系にも欲しいのです。

しかしそれをしてしまうと、受験料収入が減るという経営上の懸念があります。

それなのにあえて、リスクをおかしてまでやるというのは、想像以上に議論になったことと思われます。

ライバル慶応義塾大学に遅れをとってきたという焦り
開学150周年を控えての抜本的な改革
私学入学定員の締め付け

考えられることはいくらでもあります。

しかし根本はやはりAIの圧倒的な力ではないでしょうか。

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知識偏重の時代に遅れた勉強の仕方だけでは、とてもこれからの時代をつくる人材を社会に送り出すことができないと大所高所にたって判断したのではないでしょうか。

本当に学びたい頭の柔らかな学生に来てほしいという、大学側からのアピールのようにも見えます。

今までの暗記中心ではない学問の仕方をしていこうという悲願のようにもみえます。

つまりこれはもう大学という枠の中だけの話ではありません。

ビジネスの世界のニーズがここにやってきたということなのではないでしょうか。

「思考力・判断力・表現力」の3つが今や必要とされているのです。

数学を学ぶことで養われる力が必要だということなのです。

そこでの数学は公式を覚えて解くといったような類いのものではありません。

たとえば三角形の内角の和は180度であるというようなことを、全く数学を知らない人に対して誰にでもわかるように証明する方法を考えること。
一辺が1センチの正方形を4つ縦横に並べると面積は4平方センチの正方形になるが、これでどのようにしたら半分の2平方センチの正方形を作り出せるかといったような問題です。

最初の問題には錯角、同位角、後の問題には平方根の考えが出てきます。

あるいは二乗してマイナスになるという虚数の考えから複素数平面にまで論点を広げていきます。

このように数学の考え方は、公式で解くというより、その場で頭を柔らかくして、n次元から無限次元までのひろがりを考えさせるということなのです。

このような思考回路がビジネスの現場ではますます必要になります。

一本の直線をひくだけで、世界がその瞬間からかわってしまうといったような経験をすることが増えるでしょう。

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誰にも理解しやすいチャート図をただちに作り上げてシステム化できる能力は高い評価を得ると思います。

数学的能力のすぐれた人間は考えるべき範囲を絞り込み、そこに集中できます

このような思考をするのに、思考力と表現力が必要なのです。

かつてマイクロソフトの面接で使われた試験問題につぎのようなものがありました。

「富士山を移動させるにはどのぐらい時間がかかるか、書きなさい」というものです。

問われているのはどのくらい時間がかかるかです。

富士山の標高、裾野の直径
富士山という円錐の体積
10トントラックが1台で運べる土砂の量
1000台のトラック
1日に運べる土砂の量

計算の結果、2億4320万日が必要で、約66万年になりました。

どうでしょうか。

これからはこうした能力こそが必須なのです。

そのための数学脳だと考えれば、大学がこの試験にシフトした理由も理解できるというものです。

文系だから数学はいらないという時代は既に過去のものです。

今年の応募予想状況をみると大学側の不安をよそに、おおむね好感をもたれて受け止められているようです。

来年度の早稲田大学政経学部の予想志望倍率は昨年より高いということです。

2020年度の試験はどうなるのでしょうか。

今後の動向に大いに着目したところです。

プログラミング世代

小学校に導入されつつあるプログラミング。

これも新しい世代のキーワードです。

簡単なものから複雑なものへ、自分でプログラムを組んでいくという作業は数学脳と密接に繋がっています。

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2020年度から、小学校でプログラミング教育が必修化されるという事実は重いです。

プログラミングをするには、コンピューターに理解可能なプログラミング言語で指示を出す必要があります。

この指示を出すという作業が頭の中を柔らかくさせるのです。

子供は大人が思っている以上にいろいろな思考を自由にします。

その結果、きちんと動くということが確かめられると、さらに自発的に勉強をします。

プログラミングは勉強というより、遊びの延長に近いのかもしれません。

必修化といっても「プログラミング」という教科が新たにできるのではなく、算数や理科、総合的な学習の時間など、既存の教科の中に取り入れられることになっています。

子供は自由で大胆な発想をもっています。

失敗を恐れずにチャレンジする傾向があるようです。

自分のかわりにプログラムが指示を与えるという楽しみを知れば、黙っていても子供は勝手に続けます。

その世代がどんどん高校、大学へ進むという中で、今回の早稲田大学の入試変更の方向性も考えなくてはいけません。

全ての流れの底には人工知能時代を生き抜こうとする人間の姿があります。

画一的な仕事を正確にこなすという作業以外の場でしか、生きていけない社会になりつつあります。

そこで必要なものとしての、数学脳は今や必須と考えていいのではないでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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