「AIと労働」人工知能全盛の時代、生き残るために必要なスキルとは何か

小論文

AIと労働

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は喫緊のテーマ、AIを扱います。

AIは生活の利便性を格段に高めてくれつつあります。

選択の幅が広がり、より良い消費が可能になるという意味では、大いに歓迎したいところです。

しかしその一方で、労働環境が激変することは容易に予測できますね。

想像以上にこのシステムは有能です。

1度記憶したことは絶対に忘れません。

疲れたり、飽きたりすることもない。

同じ動作を夜昼関係なく、効率的に繰り返します。

さらに自分で学習もします。

当然、その影響で職を失う人も増えるでしょう。

あるいは今より賃金が下がることも考えられます。

消滅する可能性があるのは、特に「単純な作業を繰り返すもの」や「それに沿って決まった手順を進むルール」のある職業です。

例えば、事務のデータ入力や計算業務、コンビニやスーパーのレジ業務、

さらに一部のカスタマーサポート業務などがAIで代替される可能性が高いと考えられています。

AIは特に、定型的で複雑な判断を必要としない作業を正確に処理するのが得意です。

共存していくためには「人間にしかできないスキル」を磨くことが大切でしょう。

それはどのようなものなのでしょうか。

これらの論点は、今年の大学入試においても、当然小論文の対象となります。

あなたの考えをまとめておく必要があります。

課題文

次の文章は、かつての産業革命がブルーカラー労働者を淘汰したのと同様に、

AIがホワイトカラー労働者の1部を淘汰する可能性について書いているものです。

筆者はAIが導入されることによって経済や労働市場に重大な影響を与えると指摘しています。

AI技術の発達が社会に与える影響と、我々がAIとどのように共存していくべきか。

あなたの意見を500字以内で書きなさい

これが設問のすべてです。

以下に課題文の一部分を掲載します。

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価格あるいは評判などの数値データについては、デジタル化によって瞬時に比較可能になりました。

そこにAIの登場です。

今はまだ「自ら検索し、情報を読み取り、比較できる賢い消費者」だけが情報の非対称性を

見破り、最適化しているだけですが、AIに任せると「誰もが」そうできるようになります。

そうなると、ほんの僅かな無駄なコストが企業にとって命取りになります。

処方箋薬局で薬を購入すると、領収証に「調剤技術料」や「薬学管理料」という欄があります。

Antonio_Corigliano / Pixabay

その代金は、薬そのものの値段である薬剤料と同じくらいの値段である場合もあります。(中略)

けれども、お薬手帳などで薬剤師が管理するかわりに、保険証をICカードにして投薬履歴を

管理し、AIが薬の副作用の可能性をチェックしたり、ジェネリック薬の有無の情報を

提供したりするシステムにした方が確実で、しかも手数料は不要です。(中略)

繰り返しになりますが、AIは自ら新しいものは生み出しません。

単にコストを減らすのです。

本来はAIにさせることによってコストを圧縮できるはずなのに、それをしなかった企業は市場から退場することになります。

そして、一物一価に収斂するまでの時間がどんどん短くなっていくのです。

それがAI‎によって起こると考えられる破壊的な社会変化です。

この時代を乗り切れない企業は破綻したり吸収されたりする前に人間を働かせたり、

品質管理を疎かにしたりすることで、AIに対抗しようとしがちになります。

当然、職場はブラック化しやすくなり、不祥事が起きやすくなるはずです。

この事実を見ないふりをして今のまま突き進むと、日本の企業の利潤率はさらに下がり、

生産効率は上がらず、非正規雇用労働者が増え、格差が拡大し一世帯当たり収入の中央値は下がり続けます。

そして日本を代表する企業が1つ、また1つと消えていきます。

出典 新井紀子著「AI vs 教科書が読めない子どもたち」

AIにできない仕事

AIは万能ではありません。

人工知能に奪われてしまうというと、かなりの衝撃ですが、取って代わることのできない仕事も数多く存在します。

AIは高度な対人スキルが必要な業務はあまり得意ではありません。

同じ動作を単純に繰り返す仕事なら、人間よりもAIの方がずっと優秀です。

業務の効率化も進められます。

労働力不足の緩和や、そのほかの必要な業務に時間を割くことができるようになります。

ではAIに奪われる確率が低い仕事とは何でしょうか。

それは真逆の不得意な場合を想像すればいいのです。

例えば、以下のような職業です。

カウンセラー、医師、介護職、教育関係、コンサルタント、クリエイターなど。

すなわち、人間同士の関わり合いや共感をともなう仕事です。

しかしそれ以前にこういうケースも想定しておかなければいけません。

悲しいことですが、人間だけに振り分けられる仕事です。

それはコストがAIより低い仕事です。

AIを活用するには、かなりの先行投資が必要です。

それよりも人間を使った方が安価な場合は、そちらに傾くはずです。

しかしここでは具体的にその例は考えません。

大切な論点は「感情」がつねについて回る仕事についてです。

感情が関わる仕事は、AIには再現できない人間らしさが求められます。

最も難しくルーティン化できない内容を想像すれば、容易に答えがでます。

介護職やカウンセラーなどの仕事は、つねに「本当の共感」が必要です。

AIが仮想的に人に寄り添うのは困難です。

さらにいえば、複雑で臨機応変な動作が必要な仕事が全て、その範疇に入ります。

介護、医療、建設、教育などの現場はつねに複雑な判断を必要とします。

パターン化された業務だけでは代替することはできません。

複雑な経営戦略を練ったり、創造的なディレクターの仕事も柔軟な判断力や想像力が必要でしょう。

必ず残りますね。

必要なスキル

ここまで考えてきて言えるのは、今後失業するリスクが高い職業を選ばないことが必須だということです。

AIは業務効率の向上に役立つ便利な技術です。

しかし、あらゆる業界で失業の発生がつきまといます。

どうすれば、これからの時代を生き抜けるのでしょうか。

ポイントは共感と感動です。

AIにできないものの究極は「独創性」と「創造性」につきます。

しかしこのスキルを身につけることは容易ではありません。

具体的には次の3つです。

①創造力が求められる仕事
②人との深いコミュニケーションが必要な仕事
③問題解決や企画力が求められる仕事

今後、私たちは「人間にしかできないスキル」を磨くことがどうしても大切になるのです。

税理士、公認会計士などの仕事は、やがて消えていく運命かもしれません。

事情は銀行も全く同じです。

ATM装置だけが並んだ店頭に、今や銀行員の姿はありません。

その反面、人間を相手にした仕事は生き残る可能性が強いです。

医師や教師などは、形を変えながらも、存在し続けるでしょう。

人間は予測不能な行動を次々とします。

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瞬時にふさわしい対応ができるのは、正確な判断力を備えた人間だけです。

いずれにせよ、AIがもたらす明暗が、世の中をかえることは間違いありません。

そのことに対して、どう対処すればいいのか。

今回のテーマは必ず来年度も出題されるに違いありません。

課題文がある時は、その内容を正確に読み取り、どの視点から文章をまとめればいいのかを考えてください。

課題文が最大のヒントなのです。

だからといって、正面から全て筆者の意見を取り込んでしまうのは避ける必要があります。

あなたの考えとの微妙な差を大切にしなくてはいけません。

そこから枝葉が出るのです。

最初に800~1000字程度で文章をまとめてみてください。

自分の考えをきちんと示すことです。

添削をしてもらえる環境があれば、積極的にお願いをしてください。

小論文は単純に採点ができるようなものではありません。

確かな識見をもった人にみてもらいましょう。

今回も最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。

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