【まふまふとゆずの間】わずか10年の間に歌の意味は大きく変わった

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曲がり角の紅白

みなさん、こんにちは。

元都立高校教師、すい喬です。

今回は大晦日に見てきた紅白歌合戦の感想を書きます。

この番組が曲がり角に来ていることは、つい先日も書きました。

今の時代、視聴率が30%を超えればそれだけでお化け番組です。

だからといって今のままで続けるのはどうか。

完全に仕立て直しをしなければならないところへきています。

時間がきたらテレビの前に座って黙ってみてくれる視聴者は確実に減っています。

彼らの心に落ちる歌がないからでしょう。

共同幻想としての流行歌は消えました。

そういうものを探すことがもうムダなのです。

根本的に製作者は議論をしなければならない段階でしょうね。

紅白に分かれて歌合戦をしているような時代背景ではありません。

そのことを会場で思い知りました。

1番気になったのはやはり知らない歌手の多さです。

ここまで世代によって歌というものに対する考えが分かれてしまっているのだということをあらためて実感しました。

背景にYoutubeに代表されるメディアがあることです。

全く見たことも聞いたこともない人達が活躍できる時代になりました。

そこを掬い取ろうとすると、デジタル弱者の人々は完全に振り落とされてしまいます。

網をどこまで用意すればいいのか。

これからの難題ですね。

その典型的な歌を取り上げてみましょう。

まふまふとゆず

今年の紅白の話題をさらったのはやはりYoutubeでした。

突然現れたピアノボーカルの藤井風もその1人です。

もう1人は誰もが目を見張ったというまふまふでした。

もちろん、ぼくなぞが知る由もありません。

NHKの公式チャンネルで、その出演動画が400万回以上再生されたと聞いて、ただ驚くばかりです。

知っている人は知っていたんでしょうね。

まさにデジタルディバイド現象です。

デジタル機器を扱えない者、情報にアクセスできない人にとって、はるか彼方の人間です

ニコニコ動画などでは熱心なファンがいたようですね。

突然あらわれ、黒ずくめの衣装でカンザキイオリさんが作詞作曲したボーカロイド楽曲(初音ミク)を披露しました。

タイトルもすごい。

「命に嫌われている」です。

歌い終わった後の挨拶もきちんとしていました。

貴重な機会で、たいへん光栄でした、ありがとうございましたと応じたのです。

その姿も話題になりました。

公開されている21年末の紅白出場者の動画では、「YOASOBI」「NiziU」などを倍近くも抜いてダントツなのです。

それ以上に驚いたのが、この歌の歌詞です。

一緒に観覧した家人は、ここまで歌はきてしまったのかといって絶句していました。

歌は時代の鏡です。

現代がどのような時代なのかを短い言葉で表します。

その意味でこの歌には十分な救いが用意されていません。

歌詞

全体を通じて「死」が基調の詞です。

AbsolutVision / Pixabay

以前ならそこに少しの希望を抱いて、前へ進もうというメッセージがこめられていました。

しかしこの歌詞を読んでいると、SFの世界を妄想する以外に死をさける方法はありません。

誰にも知られずに枯れ葉のように消えていく命。

その命に嫌われているという内容なのです。

なんという暗い内容なのでしょうか。

ぼくこの詞を書いた人のことまではよく知りません。

多くの文学者にとって死は想像の源泉でした。

しかし今、この内容を読んでいると、無常を語り続けた鴨長明にも似た不思議な精神世界を感じます。

もう1つ気になった歌があります。

それかゆずの「虹」でした。

10年前の世界

かつてゆずはNHK『アテネオリンピック中継』公式テーマソングなども歌ってきました。

2004年、「栄光の架橋」という言葉が飛び交ったのです。

アテネ五輪で日本の選手の活躍し、トップ10にもランクインしました。

その後、2009年にリリースされたのが「虹」です。

あれから10年が過ぎて世界も日本も変わりました。

コロナ禍だけがその理由ではないでしょう。

作詞作曲は北川悠仁です。

「虹」の美しいイメージがこの曲を彩っています。

彼らの澄んだ高音に酔っていると、不思議なくらいにまふまふの歌との温度差を感じます。

わずか10年たらずの間に、人々の死生観は変化してしまったのでしょうか。

それはよくわかりません。

これからじっくりと考えてみたいと思います。

しかし以前とは違う地平に出てきたのは明らかですね。

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何が自分にとって大切なのか。

それを知る時期に来てしまったのかもしれません。

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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