「細雪・谷崎潤一郎」桜の放つ悠久への夢を非情の時が消し去ってゆく

谷崎潤一郎の『細雪』はよく源氏物語との類似性が指摘されます。長い小説の中に、人の持つ無常の悲しみが色濃くにじんでいるからです。大人のための小説といっていいのではないでしょうか。ぜひ四姉妹の生きざまを追いかけてみてください。

「浮舟と薫の再開・山路の露」宇治十帖の主人公・薫の後日談が気になる

浮舟と薫の再開は宇治十帖を読んだ人にとっては気になりますね。その後二人はどうしたのか。そのまま別れてしまうか。あるいはどこかで出会うのか。それを解決しようとしたのが『山路の露』という本です。薫の後日談なのです。

「紫の上の死・御法」光源氏最愛の人は養女・明石中宮に看取られて旅立った

紫の上と源氏はどのようにして出会ったのか。その後二人の関係はどうなったのか。大変気になりますね。たくさんの女性に懸想した源氏が最後に戻ったのは、やはり紫の上のところだったのです。何が二人を繋げあったのか。考えてみましょう。
学び

「機械論的身体観・中村雄二郎」人間を器官として捉えることの是非を問う

人間を分解可能な機械として考えるといしう唯物論的な認識に対して、哲学者中村雄二郎は、正反対の立場をとりました。そこから新しい見られるものとしての身体だけでなく、根源から総体として見る人間の可能性を考えたのです。

「雨の夜の訪問・いみじう降るをりに・枕草子」男の本心を推しはかるには

雨の夜にやってくる男の本心はどこにあるのか。そこに本当の愛情があるのかどうか。それを見極めることがいかに難しいのか。清少納言は枕草子の中で、そのことを丁寧に解説しています。待つ身のつらさをあらわす女性の立場を考えてみます。

「愛嬌こぼるる女御・建春門院中納言日記」平安の時代のきらびやかな回想録

建春門院中納言日記という懐古記録があります。藤原俊成の娘が書いた本です。対象は彼女が仕えた後白河院の女御、建春門院その人です。平安貴族の時代が去り、当時のことを知っている人も次第に減っていきつつあったのです。
ノート

「陰翳礼讃・谷崎潤一郎」微かに光の残る幽暗の中にこそ日本文化の神髄が

谷崎潤一郎の『陰影礼讃』は昭和8年に書かれた彼の代表的なエッセイです。ここでは日本の文化の神髄がどこにあるのかということを、光と影の二項対立の中から示しています。現実には次第に失われつつあった時代に抗おうとした文章でした。

「趣きのある情景とは何か」兼好法師の説を批判した本居宣長の考え方は

徒然草を書いた兼好法師の立場を批判した本居宣長の文章です。どちらの立場を貫くのかによって、見えてくる風景が微妙に違います。しかしよくよく考えてみると、どちらもそれほどに違う立場に立っているようにも見えません。ぜひ、考察してみてください。
ノート

「旅人かへらず・西脇順三郎」超現実主義的感覚の果てに得た「幻影の人」とは

詩人、西脇順三郎は超現実主義を学び、そこから自分の世界を切り開きました。「旅人かへらず」という詩集には一人の旅人が戦後の武蔵野の原を歩きながら、幻影の自分に出会う情景を描いています。淋しさという言葉に代表される彼の世界を味わってみてください。

「岩橋の契り・俊頼髄脳」修験者の途方もない願い「葛城から金峰山へ橋を」

岩橋の夜の契りという題で有名な葛城山の話です。一言主という葛城山に住む神に役行者が橋を架けてくれと頼みます。金峯山までの石の橋です。ところが一言主は夜の間だけしかやろうとしません。その理由が非常にユニークなのです。

「茶番に寄せて・坂口安吾」日本の文化に道化の観念が希薄なのはなぜか

日本の文化には道化の観念が薄いといわれています。日本人は真面目な民族なのかもしれません。笑いはどのようなシステムの上に成り立っているのか。それを坂口安吾は解析しています。理由をたずねながら、読んでみましょう。

「義家、兵法を学ぶ・古今著聞集」匡房卿の教えを守り伏兵を見破って勝利した

大江匡房に師事した八幡太郎義家は戦いの場で、その教えを守り、伏兵の存在を察知しました。そのおかげで、無事に勝利を収めたという話です。孫子の兵法がどれほどの意味を持っていたのかを、実感する話です。
学び

「蜂飼耳」詩はいつも近いところにあるのに「見たことのない風景を見たい」

詩人、蜂飼耳の世界を考えてみましょう。詩は本来どのようなものなのか。それを正確に知るためには何が必要なのか。神話の世界から平行移動しながら、現在を読み取る試みをしてみました。

「発心集・西行法師と娘」出家して数年後粗末な着物姿で遊んでいる娘を見て

西行法師と娘みなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。今回は歌人、西行(1118~1190)を取り上げます。平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての人です。俗名は佐藤義清(のりきよ)。鳥羽院に仕える北面の武士でした。西行は歌人として有名で...
小論文

「徒然草・百日の鯉」兼好法師を支えた美意識はわざとらしさの排除だった

徒然草の中に出てくる百日の鯉の話です。料理の名人に鯉の調理をみせてもらいたかった人の話です。もったいぶって、話をつくるくらいなら、ただ素直に包丁をもってさばいてほしかったという兼好法師の美意識を示したた段です。
小論文

「町田高校推薦・オーバーツーリズム」価値観と文化の違いをどう乗り越えるのか

今年度、都立町田高校の推薦入試問題を考えてみましょう。内容はオーバーツーリズムについてです。しかし400字の制限があります。高校に入った後の自分の行動を予測しながら、他者と折り合いをつけていくための方法を考えさせる問題です。