「フールプルーフ」人為的ミスを防ぐ設計思想をくまなく広げれば90%は安心

小論文

設計思想

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回はとある国立大学医学部の小論文問題を扱います。

いわゆるテーマ型と呼ばれるタイプのものです。

大変に問いが短いので、慣れていないと戸惑います。

掲載しましょう。

問題は以下の通りです。

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フールプルーフとは利用者が取り扱い方を誤っても危険が生じない、あるいは、そもそも誤った操作や危険な使い方ができないような構造や仕組みのことを指します。

この考えを利用した構造や仕組みを考案し、1000字以内で説明してください。

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あまりにも短くてこれで1000字を要求されても、途方に暮れてしまいますね。

医学部の小論文として出題されていることを」考えると、何か医学に関連した内容を盛り込まなくてはいけないのかと、つい問いの意図まで深読みしてしまいます。

ところで、あなたは「フールプルーフ」という表現の意味をご存知でしょうか。

「フール」はわかります。

愚か者のことです。

「プルーフ」は証明とでも訳せばいいのでしょうか。

英語の「proof」です。

他の単語と組み合わさって「~に耐える」「~を防ぐ」といった意味で使われることもあるようです

しかし入試に突然、知らない単語が出ることの怖さを実感しました。

ポカヨケ

これは別名「ポカヨケ」と呼ばれているそうです。

つまり作業ミスをどうやったら未然に防げるのか。

そのための仕組みや装置として、どのようなものが考えられるのかということです。

人間のやることです。

製造過程において、さまざまなミスがつきものです。

具体的には、部品の取り付け間違いや検査漏れも考えられます。

つまり、ヒューマンエラーによる不良品の発生を抑え、品質向上や生産性向上をどうはかるかということなのです。

ここまで考えが及べば、ある程度の文章は書けそうです。

しかし普通に暮らしている高校生にとって、「フールプルーフ」という言葉から商品の製造過程をイメージするのは、それほど簡単なことではありません。

最大のヒントは「誤った操作や危険な使い方ができないような構造や仕組み」という表現です。

どうやら製造する側からの視点は休ませておいて良さそうです。

調べてみたところ、「ポカヨケ」という表現は、元々トヨタの自動車工場から出た表現だそうです。

おそらく、さまざまな部品を一度に組み立てるラインで、ミスが起こったところから命名されたのでしょう。

そのことは理解できます。

しかしそれを大学入試の場で1000字にまとめるというのは、容易なことではありません。

設計思想などということについて、この問題を読み解くまで、考えたこともなかった人が多いはずです。

受験生にとってはかなりの難問です。

いわゆる哲学的なテーマとか、文化などに対するものなら、なんとか食いついていけます。

しかし生産方式の現場に関する問題など、考えたこともないのが普通なのです。

フールプルーフ

ここでは具体的には考えるということが、なによりも難しいですね。

すぐにイメージが浮かぶ人はよほど、日々の暮らしに目が向いているとしか言えません。

人間はミスをする生き物だというのはよくわかります。

自分の周囲にそうした設計思想を組み込んだ製品があるかを考えるのが、一番苦しいはずです。

イメージが浮かんだでしょうか。

事故を防ぐための対策を事前に組み込む設計手法などということを想像するのは、結構厳しいです。

ちなみに、この「フールプルーフ」の他に「フェールセーフ」という表現もあります。

日本ではほぼ似たものとして認識されています。

人為的ミスやシステム故障による事故を防ぎ、被害を最小限に抑える不可欠な設計思想です。

新しい商品と少し前に製造されたものには大きな差があります。

それだけ、危険を回避するための技術がもりこまれているのです。

特に家庭用の電気製品にその傾向が強いのではないでしょうか。

どのようなものがあるのか。

試験の短い制限時間の中で、それを見つけるのは容易ではありません。

しかしそれをしなければ、合格は覚束ないのです。

ぼくが一番最初に思いついたのは電子レンジの例です。

ドアがしっかり閉まっていないと全く作動しません。

さらに温まった食品が中に入ったまま一定時間が過ぎると、アラームがなるというものです。

実は以前買ったものでかなり失敗をしています。

なかに食品を入れたまま、忘れてしまったケースが何度もありました。

そのたびに、次は必ずアラーム付きを買おうと考えていたからです。

ところで、冷蔵庫も少しでもドアが開いていると、すぐに音が鳴ってしらせてくれます。

この程度のことで、小論文の問題用紙を埋めることができるのかどうか。

やや不安ですね。

それでも何も具体例がないのに比べれば、かなり気が楽になりました。

電気ケトルが沸騰後に自動で電源が切れて空焚きを防止するなどというのも、1つの具体例です。

人間のミス

フールプルーフは「人間は必ずミスをする」という前提に立ちます。

そこを強調して、文章をまとめる以外にいい方法はなさそうです。

しかし家庭用電気製品の話だけでは、テーマがふくらみません。

もう少し、他の内容はないのか。

それを1つ1つ探していくのがここでの課題なのかもしれません。

安全設計への関心は、ヒューマンエラーと直結していることを強調するべきでしょう。

SDGsやデジタル社会における安全工学の重要な要素だと思われます。

フールプルーフの例として、製造現場では部品を正しく組み立てるためのピンが配置されたり、色分けされた工具や部品の場合があります。

明らかに誤使用を防ぐためです。

これにより、安全性の強化、業務効率・品質の向上、コスト削減などに寄与します。

例えば、エレベーターは電力が途絶えた際に停止するよう設計されています。

乗客が閉じ込められたり、カゴが急降下したりするリスクを防ぎます。

鉄道の信号機は、電球が切れても「赤信号(停止)」を表示するように設計されています。

ガスレンジの自動消火機能や、石油ストーブの転倒時自動消火装置などまでイメージが広がるでしょうか。

自動車のシートベルトは締めていないと、アラームで教えてくれます。

エアバッグは衝突での被害を回避するための例です。

製品やサービスに組み込まれたシステムによって、安全性が飛躍的に向上するのはよく理解できます。

最後に医学と関連した内容の例を挙げられれば、理想的です。

先端の医療技術は、少しのミスも許されません。

注射器の針が誤って刺さることのないように、カバーがついていることなど1つでいいのです。

医療従事者として誤動作をしても、カバーしてくれる機能をいくつか学んでおきましょう。

小論文の考え方

このようなテーマ型の問題の場合、解答にたどり着くための方法は大変に難しいです。

事実をきちんと認識していればいいのですが、全く見当もつかない場合、途方に暮れてしまいます。

それだけ課題文が重要なヒントだと言えるのです。

常日頃から、新聞などを丹念に読み、さまざまな知識を身につけておく必要があります。

それでもすべての内容を網羅するのは、容易なことではありません。

入試を受ける段階でそれだけの覚悟をしておく必要があるでしょう。

今回はぼく自身の自戒をこめて、この文章を書きました。

安全工学といったような、全く普段触れたことのない分野にも食指を伸ばしておく必要があります。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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