AI時代の学びとは
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は都立八王子東高校の過去問につい考えます。
ここ数年にわたって、よく出題されるテーマに「学び」の意味とは何かという問題があります。
なぜ人は学ぶのかという、根本的な命題を正面から取り上げたものです。
かなりの難問ですね。
AIとからめ、この時代を生き抜く真の学力とは何かというテーマが主流のようです。
人間がAIに支配されつつあるのは、誰もが承知していることです。
感情がないだけに、あらゆる先入観が介在しません。
システムを開発した人にとって、それが得なのか、損なのかが判断の基準になります。
場合によってはAI同士の戦争という可能性も考えられます。
そうした時代の中で、「学ぶ」ことにどういう意味があるのか。
記憶するだけならば、AIに勝つことはできません。
損得だけが判断基準ではない、人間の道徳や感情を一緒に考察するとなると、当然、学ぶことの意味もあらわれてくるでしょう。
ここでじっくりとこの問題に正対してみます。
昨年から登場したチャットGPTを利用しながら、考えてみようと思った次第です。
小論文の問題で最も大切なのは、設問の指示をきちんと守ることです。
指示は以下の通りでした。
—————————–
①次のAとBの文章を読んでそれぞれの内容に触れながら学ぶとはどういうことかあなたの考えを500字以内で述べなさい。
②文章の構成は3段落か4段落とし、主張の説明として具体的な例を示すこと。
課題文Aは長いのでここでは省略します。
必要な場合は扱った記事をリンクしておきましたので、そちらを参照してください。
課題文B
学んで思わざれば則ち罔く、思いて学ばざれば則ちあやうし。
「学んで」すなわち外からの習得だけにつとめて自分でよく考えることをしなければ、ものごとははっきりしない。
反対に「思いて」自分で思索するだけで外からの知識の習得につとめなければ、かってな独断に陥って危険だという。
「学」と「思」とが車の両輪のように併行することが必要だというのである。
ここには学問のあり方についての重要な提言がなされている。(金谷治『論語の世界』)
指示は以下の通りでした。
①次のAとBの文章を読んでそれぞれの内容に触れながら学ぶとはどういうことかあなたの考えを500字以内で述べなさい。
②文章の構成は3段落か4段落とし、主張の説明として具体的な例を示すこと。
課題文Aは長いのでここでは省略します。
必要な場合は扱った記事をリンクしておきましたので、そちらを参照してください。
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ポイントは段落構成が限定されていることと、具体例が必須だということです。
この2つと制限字数500字を守らなければなりません。
もちろん、時間も守らなければなりません。
八王子東高校の問題は例年、2問です。
つまりこのテーマに関しての持ち時間は30分しかありません。
その短い間に、具体例を必ず入れなければ、評価は低いままです。
これだけははっきりしています。
どこで目立たせるのか
今回、チャットGPTに問うてみました。
どのような解答になったのでしょうか。
孔子の言葉「学んで思わざればすなわち罔(くら)く、思いて学ばざれば、すなわちあやうし」と経験との関係について論じよという問いに対しての答えは以下の通りです。
孔子の言葉は、学びと経験の相互関係について深い洞察を提供しています。
この言葉は、学びと経験が単なる情報の取得だけでなく、その意味を理解し、自己の成長と洞察力の向上に結びついていることを示唆しています。
学びと経験の関係は以下のような要点で論じることができます:
①学びからの思考
学びとは、新しい情報や知識を取得するプロセスです。
しかし、その情報を単なる表面的なものとして受け入れず、深く考えることが重要です。
経験を通じて得た洞察や知識を、学んだ情報と結びつけて考えることで、より深い理解が生まれます。
この思考の過程により、知識が実用的な知恵に変わり、生活や意思決定の質が向上します。
②経験からの学び
経験は、実際に体験し感じた出来事や状況から得られる知識です。
ただ経験をするだけでは、その意味や教訓を活かすことは難しいです。
しかし、経験を振り返り、自己の行動や反応を分析し、それに基づいて学びを得ることが重要です。
過去の成功や失敗から学び、同じ過ちを繰り返さずに前進することができます。
③学びと経験の相互補完性
学びと経験は相互に補完しあう関係にあります。
新しい知識を学ぶことで、過去の経験を新たな視点から見ることができます。
逆に、経験を通じて得た洞察や感情は、学びのプロセスをより意味深いものにします。
両者を組み合わせることで、より豊かな学びと成長が促進されます。
④自己成長と洞察力
学びと経験の結びつきは、自己成長と洞察力の向上に大きな影響を与えます。
学びと思考を通じて新たな視点を得たり、経験を通じて得た教訓を活かしたりすることで、自己の認識が深まり、より賢明な判断が可能となります。
これにより、個人は自分自身や周囲の世界に対する理解を深め、持続的な成長を遂げることができます。
総括すると、孔子の言葉は学びと経験の相互関係を通じて、知識の深化や自己成長、洞察力の向上が可能であることを示しています。
ただ知識を蓄積するだけでなく、その知識を思考し、経験を通じて学びを得ることで、より豊かな人生を築くことができるとされています。
創造的な分野
内容的には確かに4つの段落に分かれています、
この文章を「である」調に書き直せば、確かに小論文らしくはなりますね。
しかし一言でいえばあまりにも教科書的です、
無理に読まされている印象が残ります。
血が通っていないのです。
なぜここに示されたような考えを持つに至ったのかを具体例をあげ、示さなければなりません。
そこが最大の眼目なのです。
これからの学びは記憶するレベルを遥かに超える必要があります。
倫理的な判断や感情をともなう学習が必要です。
より具体的にいえば、柔軟性です。
AIが苦手とする、最も人間らしい技とは何でしょうか。
おそらく、創造的な分野でしょうね。
芸術、文学、音楽、デザインなどの分野では、個々の表現力や感性が大きな価値を持ち続けるに違いありません。
既存のパターンから抜け出す苦労とそれが達成できた時の喜び、楽しみなどについても言及することが可能です。
さらに同じ人間を相手にするあらゆる行動の背後には、学際的な領域についての学問も必要となります。
教育や医学などの分野は、結局人間にしかできない個人的な行動から出来上がっています。
学習のあり方やその再現の仕方なども千差万別なのです。
人間に特有な独自の感性や表現を基本にしていくと考えた場合、裾野は広がっていきますね。
その範囲で自分が今までにうまくいった例はなにか。
その反対に失敗したことはなにか。
とはいえ、自分の経験に無理にこだわる必要はありません。
よりわかりやすく具体的に説明できればいいのです。
あるいは学習したい内容をより細かく示すことです。
それを前面に押し出してください。
チャットGPTは骨格を表現する手段に過ぎません。
これが生成AIの限界なのです。
そこからどう内容を飛躍させるのか。
書き手の感性が試されます。
自分でとにかく書いてみること。
それが全てです。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。