パラサイトシングル
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は少子高齢化社会の断片を切り取ります。
テーマはパラサイトシングルです。
今日、日本の雇用は複雑化する一方です。
正規と非正規の格差も深刻です。
若者の働き方だけでなく、失業率などについても多く論じられてきました。
少子高齢化といわれて久しいです。
団塊の世代が後期高齢者になり、新生児はついに年80万人を割るという予測もあります。
未婚者数が減ることはありません。
日本は今までにない、複雑な社会構造になりつつあるのです。
財政の逼迫も明らかです。
年金財源の不足も声高に語られ、増税の懸念も近づいています。
今回はそうした問題の背後にあるといわれている、パラサイトの問題を考えてみましょう。
筆者は社会学者、山田昌弘氏です。
この問題は以前、山口大学経済学部で出題されました。
設問は課題文を読み、「パラサイト・シングル」について800字以内で書きなさいというものです。
文の内容はそれほど複雑なものではありません。
ポイントは、あなたがどの立場にたってこの文章をまとめるのかということです。
課題文の主張に賛成するのか、反対するのかによって、かなり内容が違ってきます。
周囲を見回した時、似たような状況はないでしょうか。
特に高齢者の就労が、パラサイトと密接な関係にあるという筆者の論点を、どう考えるかによって、まとめ方がかわってきます。
パラサイトはやむを得ないことなのか、それとも甘えなのか。
課題文はどちらの立場なのかによって、全く違うものになります。。
基本的には筆者の論点に賛成した方が書きやすいのは、いうまでもありません。
ただしその場合、どうしても文章が重なり、単調になりやすいのです。
課題文
日本の若年失業の最大の特徴は、就職していない若者が増大したことが問題なのではなく、若者の失業者が高いのに、それが大きな社会問題とはなっていないという点に尽きる。
欧米、特にヨーロッパでは、若者の失業は大変な問題で、職のない若者が福祉の世話になったり、ホームレスとして路上に溢れ出している。(中略)
しかし、日本では、失業率が高くなった割には、生活苦で福祉の世話になる若者が増えたという報道にはお目にかからないし、生活苦からの犯罪が大きく増えているわけではない。(多少は増加しているが)。
現代日本の若者の失業が、それほど社会問題にならないのは、若者が親と同居してパラサイト生活を送っているからである。
日本の若者の失業は、ぜいたくな失業と言えないだろうか。
「切実に」「生活のために」仕事を探しているのではなく、「自分にあった職」「プライドを保てる職」にこだわるために、なかなか就職せず、また、自分にむかないと感じた合わない仕事はやめてしまうのではないか。
また、最近、正規雇用が減少し、派遣、パートやアルバイトという形の雇用形態が増えている。
長時間拘束されるのはイヤ、自分の時間が確保できない。
職場の人間関係がわずらわしいという意識も関係している。
これは豊かな生活を他人に支えてもらい、あくせく働く必要の無くなった立場の労働観である。
一方で、増加しているのが高齢者就労である。
日本は、高齢男性の労働力率が高いことで有名である。(中略)
私は、日本の高齢者就労率の高さは、パラサイト・シングル現象が、一枚かんでいると考える。
日本では欧米諸国とは異なって、子どもが成人すれば親の経済的役割が終わるとは言えないのだ。
それでなくても、大学進学率は上昇し、近年は大学院進学率も上昇している。
その費用だけでなく、生活費も負担しなければならない。
また、子の就労状況も不安定で結婚しなければ、夫婦二人で生活できればよいとはいえない。
つまり、日本では20代の子を持つ親は、まだ、子育て期にあるということなのである。(中略)
労働力統計には、失業者、求職者や労働者の家族状況の項目はない。
わずかに、世帯主がどうかということが示されているだけである。
しかし、パラサイ・トシングルという状況を考えると、若者にとっては親と同居しているかどうか、高齢者にとっては、子がパラサイトしているかどうかが、労働問題を考える場合に重要な要素となると考えられる。
YesかNoか
パラサイト・シングルは好ましいのか、そうでないのか。
この論点に対して、筆者は望ましくないという立場にたっています。
つまり許容していません。
仕方のない面が全くないということではないものの、親に経済的な不安を与え続けることを良しとする考えとは立場が違います。
パラサイトは問題を先送りしているだけでしかないということは、妥当でしょうか。
自ら働くことや、生きることの意味を深く考えることの大切さも、ここで再認識する必要があります。
親は基本的に子供より先に死んでいきます。
子供は年金と貯蓄に頼って暮らしている親に、苦労をさせていいのかどうか。
こうしたポイントを、いくつか指摘すればよいのではないでしょうか。
一方、反対の立場はどう考えればいいのか。
パラサイト・シングルは、仕方のない一面もあるということを強調すればいいのです。
戦略的にみれば、種々の価値観がある時代を生きる方法として、1つの方法論として許されるのではないかという論点です。
高齢者就労の背景
パラサイトの問題は高齢者の労働問題とセットにして考えてください。
子育てが終わった後、どこまで面倒を見続けなければならないのか。
ヨーロッパなどでは、割合早い段階で引退し、その後は自分の趣味などに生きるという人が多いようです。
しかし日本の現実はそれほど甘くはありません。
特に学費が長期間にわたって必要になります。
奨学金が貸与式の場合、子供に過重な負担がかかります。
それを少しでも補ってあげたいとする親の気持ちもわかるものの、生活の基盤が崩れてしまう危険性も孕んでいるのです.
少しでも家計を補おうとして、高齢者が働き続けるという構図がみてれます。
もちろん、年金額が少ないという現実もあるでしょう。
しかしそれ以上に、働いて家に生活費を入れるわけではない子供の存在が重いという現実もあります。
老後破産の大きな原因の1つが、パラサイト化した子供が家にいるケースです。
食費から生活費まで面倒を見ながら、親たちも自分の生活を築かなければいけません。.
そのために、仕方なく就労するというケースもかなり多いのです。
父親は離職をためらうだけでなく、退職後もパートの仕事にでるケースが多く見受けられます。
そのことに対して、あなたはどのような感想を持ちますか。
自分の身の回りで、そうした例を見たことはありませんか。
あるいはそういう立場になった時、どのような感想を持つのでしょうか。
さまざまな角度から、想像力を逞しくして、文章をまめてください。
課題文をしっかり読み、見聞を1つに集約すれば、必ず書けます。
是非、トライしてみてください。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。