「足元を掘れ、そこに泉あり」出題意図を理解して読み手をインスパイアーする

学び

足元を掘るとは

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は久しぶりに小論文をテーマにします。

哲学者、ニーチェの箴言を題材にしましょう。

題材は「足元を掘れ、そこに泉あり」です。

小論文の難しさは、その言葉にこだわりすぎてしまうところから出てきます。

何が言いたいのだろう、と考えるのはかまいません。

しかしあんまりひねくり回してしまっては元も子もないのです。

結局、論点がメチャクチャになってしまいます。

あなたは、ニーチェのこの言葉を聞いたことがありますか。

600~800字程度で文章をまとめるとなると、どこに視点を置けばいいのか迷ってしまいますね。

何を結論にすればいいのか。

何を主題にすればいいのか。

確かに迷います。

高い評価を手にするためには、最初に出題意図を理解することです。

キーポイントは必ずその周辺にあるのです。

なぜ「掘る」のか。

どうして、そこに「泉」があると考えるのか。

それを徹底的に考えましょう。

似た表現に「灯台もと暗し」というのがあります。

価値のあるものは遠くにはない。

実は身近な所にあるという意味に捉えれば、ほぼ意味が通じます。

物事の本質、真理は外にではなく、自己自身の内に求めなさいと解釈することもできます。

気づきから始まる

それには「気づく」ことが大事で、気づきによって考えが深まり、行動が変わり、その人の生き方が変わるのです

確かに自分の足元が暗くて、よく見えないという現象は似ています。

しかしこの両者は必ずしも同じものではありません。

そこから次のアクションをどう起こすのかということが問題なのです。

ニーチェの箴言には、その先に「掘る」という作業があります。

そこには「泉」があり、豊かなエネルギーの源泉が満ちているのです。

「掘る」とはどういうことか。

よく考えてみてください。

一言でいえば、足元を照らし、自分の経験や知識を掘っていく作業です。

その先には何があるのか。

それは誰にもわかりません。

しかし愚直に掘り進むしかないのです。

生きていくということは、つまりそういうことです。

あなたに、なんの経験もないということはないはずです。

たとえば、自分の身の周りをみてみましょう。

学校での日々を思い出してください。

クラス、クラブ、委員会活動、学校外での体験。

家族、親戚との日常生活。

あらゆる場所で自分が何をし、何をみてきたのかを思い出しましょう。

その中で、現在の自分をつくりあげてきた源泉と呼べるものは何か。

その周辺を、少し歩き回ることです。

書くことが全く思いつかないということはないはずです。

その時に気づき、それ以降の行動の指針にしたことはありませんか。

ダラダラした文はダメ

大人に言われて気づいたことよりも、自分が失敗の中で知ったことの方がリアリティがあるでしょうね。

とはいえ、こんなことがあったという作文をダラダラ書いても意味がありません。

そこで発見したことの方に重点を置いてください。

ここで少しだけ具体的な文章の例を考えてみます。

参考にしてください。

自分の課題はこんなことだったというのでもいいのです。

たとえば、人間関係というテーマにしてみましょうか。

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中学生時代の話だ。

バドミントン部の部長をしていた時のことである。

数か月の間に、周囲の人間関係がなんとなくギクシャクしてしまった。

顧問の先生との関係もうまくいかない。

自分の何が悪いのかよくわからない。

性格に欠陥があるのか。

言葉の遣い方がよくないのか。

解決するための方法がみつからなかった。

そこで一生懸命、友人の話を聞くようにした。

不満があったら、どんなことでもいいから聞かせてほしいと頼んだ。

自分でも気がついたことは、すぐに改善するようにした。

挨拶も以前より大きな声ではっきり言い、後輩にも頭を下げた。

絶対に人の悪口を言わないように努めた。

そうしているうちに、仲間との関係が微妙に変化してしてくるのを感じた。

お互いの関係が、少しずつよくなっていったのだ。

自分一人で、責任をなんでも背負い込むのをやめたことが大きかった。

問題の解決

それ以前の失敗の中からさまざまな原因を考えた経緯を書きましょう。

その後の修正点を示すのです。

その結果、以前とは何が変化したのか。

具体的に全部書く必要はありません。

ポイントだけでいいのです。

これはあくまでも1つの例に過ぎません。

問題の解決に挑んだ実績が透けて見えれば、それは意味のある小論文なのです。

ニーチェの使った言葉の説明を、一般論で述べてもなんの重みもありません。

その中にある表現に自分を重ねるのです。

そこから解決への糸口をさぐるのです。

ここでいう「泉」とは何かを真剣に考えてください。

それは豊かにあふれるあなたにとっての命の水でしょう。

それが何だったのか。

くやしい思いをして、つらい日々を過ごしたこともあったかもしれません。

その悔しさの中を掘り進めてください。

そこからつかんだことがあれば、それが「泉」なのです。

そのことを決められた字数の中に書き込む。

それが作文とは違う、あなたの小論文です。

頑張って書き直してみましょう。

もっともっとあなた自身を掘ってください。

気づきによって考えが深まり、行動が変わる。

そのプロセスをコンパクトにまとめることで、読み手を説得することができます。

内容は当然、違ったものになるでしょう。

それでいいのです。

何があなたの核になるのか。

深掘りする作業の中にしか、源泉はありません。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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