重複なし
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回はボキャブラリーの話をします。
文章は語彙で決まるという言葉を聞いたことがありますか。
あなたは日常、どんな言葉を使っていますか。
1度、冷静な気持ちで振り返ってみてください。
通常、知っていて表現できる言葉の数を語彙と呼んでいます。
生徒の書いた文章を添削していると、同じ言葉のオンパレードに辟易することがあります。
何度も同じ言葉が単調に繰りかえされているのです。
本当にうんざりしてしまいます。
これは絶対にNGなパターンです。
それではどうしたら理解しやすい文章になるのか。
最も大切なのは相手の立場にたつことです。
イメージが浮かびやすい言葉を丁寧に並べることです。
伝わる可能性のある表現を使うのです。
具体的にはどうしたらいいのでしょうか。
特別なことをする必要はありません。
基本は言葉の「言い換え」に尽きます。
全く同じ内容でなくてもかまいません。
その周辺をめぐる表現でもいいのです。
とにかく言い換える努力をし続けることです。
いつも同じ言葉しか使っていない人は、同じ思考回路しかもっていないと判断されがちです。
採点者の立場から
採点者はたくさんの答案を読みます。
それだけに、ちょっとでも味のかわったものを食べたいのです。
つまり素材の色や質感に違いを持たせることが大切です。
さらにいえば、隠し味が欲しいのです。
出汁です。
かつおなのか、昆布なのか。
コンソメにもいろいろな味がありますよね。
その全てがあなたの文章を彩ってくれます。
読者の感性は実にさまざまです。
1人として同じ人はいません。
可動域の広い文章を書ける人は、それだけ網をかける漁場を存分に持っていると考えられます。
そこにいる魚の種類も多いです。
当然、漁獲量も増えますよね。
それだけ、評価がされやすくなるということです。
では、どうやったら語彙を増やせるのか。
とにかくこまめに言い換えることです。
同じ表現をなるべく使わない。
言うのは簡単ですが、実際にやってみると、それほど簡単ではありません。
特に抽象的な表現を別の言葉で言い換えるのは、やさしいことではないのです。
しかし諦めてはいけません。
そこに宝の山があることは明らかだからです。
最初にやるべきことは、教科書の最後によく載っている常用語句を覚えることです。
単語帳とかカードにして、覚えてください。
関連した表現も頭にいれることです。
できたら短文と一緒に覚えましょう。
英語の例文暗記と全く同じイメージです。
セットで覚える
例えば、「帰納」という表現があったら、当然、「演繹(えんえき)」とセットにします。
この言葉の意味はご存知ですね。
最重要語句です。
それぞれの意味をきちんと理解し、使えるようにしましょう。
ここまででやっと1セットです。
このパターンで「具体」と「抽象」との関係も自分の言葉でいろいろと言い換えてください。
論理的な表現が一段したら、次は全く同じ表現を別のものに置き換える練習です。
「隠喩」は「暗喩」や「メタファー」にします。
「理性」は「ロゴス」に「感性」は「パトス」に。
横文字を使えばそれでいいというワケではありません。
しかし時には劇的な効果を得られます。
知らないよりは知っている方が断然有利てす。
「オリジナル」「コスモス」「カオス」などの対比概念を多く含んだ表現は、小論文に最適です。
言葉の意味を明確に理解しているということを、相手に示唆しつつ使ってください。
それだけであなたの国語力を採点者にアピールすることができます。
基本は漢字の入った日本語の語彙をメインに使用しましょう。
しかし同じ表現をボキャブラリーと言い換えることも覚えておくことです。
テーマの持つ領域を左右に広げられますね。
できたら、もっと違うジャンルの言葉を使うことも考えてください。
「表現の可動域」などという組み合わせた言い方も可能です。
全く同じでなくてよい
100%同じ内容になるような言葉を使えと言われても、それは無理です。
必ずズレが生じます。
むしろ要点をおさえているのなら、近い言葉で言い表せているというレベルでOKです。
当然相手が知らない表現もあるでしょう。
それでも言い換えの練習は続けてください。
これは頭の体操にも通じます。
こういう時は、読書量が当然ものをいいます。
いつも噛みやすい柔らかいものばかりにチャレンジしていると、顎が弱くなりますね。
あれと全く同じ理屈です。
日常的に鍛えていかなくてはなりません。
少し、堅いものを読んでそこに出てくる表現を自分のものにすることです。
だからといって、それを連発することはありません。
突然、不意打ちのように使うのです。
むしろその方が効果的です。
文章を書き終わったら、同じ言葉をマークしてみましょう。
あまりに多い場合は、1つ1つ書き換えていく作業が必要になります。
慣れてくると、この作業が自然にできます。
つまり書きながら、少しずつ修正していくのです。
それが無意識のうちにできるようになれば、言うことはありません。
意識してもかまわないのです。
相手に十分伝わる表現に書き直してください。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。