「国際高校IBプログラム」図書館をテーマにして統計データ使った小論文

小論文

図書館の現在

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回も国際高校IBコースの入試問題を取り上げます。

2023年度のものです。

テーマは図書館の現在です。

国際高校IBプログラムの入試はここ3年間、ずっとグラフの読み取りが出題されています。

数字がたくさん出てくるので、それらをすばやく理解する能力が必要となります。

問題は日本語と英語で同じものが出されます。

あらかじめ、どちらの言語で解答するのかを決めておかなくてはいけません。

誤って解答すると、採点の対象になりません。

日本語ならば600字、英語ならば300wordと決められています。

言葉の質が違うので、単純にどちらがやさしいのかは断言できません。

それぞれの受験生の特質に関わるのではないでしょうか。

テーマは各地に点在している図書館の現状です。

平成11年度から令和3年度までの違いが他の施設との関係で示されています。

とくに、公民館や劇場、博物館との比較がユニークです。

数字の差をきちんと読み取ることがポイントでしょう。

各地に社会教育施設としての図書館が多くあることは誰もが知っています。

しかしその利用方法については、かなりバラツキがあるのも事実です。

ここでは図書館に焦点を当てた小論文の課題を前面に出して問題意識を整理する必要があります。

課題文は統計データで構成されているので、数字の理解が必須です。

図1は1999年から2021年までの社会教育施設の数の変化を示しています。

図2は2001年から2020年までの図書館の貸出冊数と利用者数を示しています。

図3は日本の図書館で実施されているユニークな戦略の例を提示しており、これらを参考に問題解決のための議論を進めなくてはなりません。

最大の論点は日本の図書館が直面している課題と、それに対する効果的な戦略は何かということです。

利用率の低下

日本の図書館が直面している主な課題は、利用率の低下です。

目につくのは、国民一人当たりの貸出冊数の減少です。

図書館の施設数は1999年の2,592から2021年には3,400へと増加しているにもかかわらず、一人当たりの貸出冊数は2010年の5.3冊から2020年には4.2冊へと減少しています。

施設の増加とは裏腹に、図書館の利用頻度や関与度が低下している事実を示唆しているのです。

文部科学省は、図書館を知識や情報への主要なアクセスポイントと認識しています。

この課題に対処するための効果的な戦略は何かが重要です。

資料には、日本の地域図書館が実施した具体的な戦略例が3つ示されています。

ここが最も大切なところです。

この内容をどの程度読み取ったかが、合否の別れ道になります。

必要な戦略は、図書館をより魅力的で、関連性があり、幅広い層に利用されやすい場所にするためのものです。

効果的な戦略

図書館に人を呼び寄せるための戦略とは何か。

資料3に示されていることとあわせて、示されていないことの内側にまで入り込んでいくことが大切なのです。

それは何か。

一言でいえば、他の文化施設との統合とコミュニティエンゲージメントの強化です。

さらに市の中心部などに図書館を移転し、美術館と併設することで相乗効果を生み出す可能性を意味します。

大学や著者によるセミナーやワークショップを開催したり、美術館と連携してコンサートを実施したりすることです。

知識や情報を提供し、中心市街地の賑わいを創りだすことです。

その結果としてこの取り組みにより、併設する美術館を含めた来館者数が3倍以上に増加した例もあります。

また地域に根ざした快適な空間を創り出し、多様なプログラムを提供してニーズを掘り起こすことですことも意味があるでしょう。

緑の豊かな田園地板に図書館を設置し、地元の木材を使用するなどして町の風景と調和させるのも1つの方法です。

本棚の読み聞かせ、文化・歴史講座、音楽イベントなど、幅広いプログラムを提供します。

この戦略により、年間10万人もの来館者を達成し、町の内外での交流が生まれた例もあります。

さらに外国人観光客が多い観光地に図書館を設置し、ホテル数箇所にミニライブラリーを設置する案も考えられます。

地域住民だけでなく観光客も対象に貸し出しを行うのです。

英語以外の言語にも対応する必要がありますね。

こうした取り組みにより、併設する村の博物館の来場者数が増加しました。

これらの戦略は、図書館が単なる本の貸し出し場所ではなく、地域社会のニーズやトレンドに対応した、多機能で文化・教育的な拠点へと進化していることを示しています。

資料3の取組例がポイント

各地の図書館によって行われた特徴的な取組例をそれぞれの項目別に分析することが、なによりも大切です。

そこから新しい方向性が探れるからです。

問題の指示は資料3に集約されています。

よく読めばわかりますが、課題への解決策を1つ具体的に述べ、資料3に掲載されている事例以外の解決策を述べなくてはなりません。

おそらく採点者はこの部分を重点的に検証するものと思われます。

国際高校の問題は、必ず資料から抜き出し考えたことからイメージを広げるだけでは通用しません。

2023_essayquestion

そこに書いてないことをあらたに積み上げる必要があるのです。

つまり経験と知識がどうしても必要になります。

多くのデータと遭遇する機会をうまくいかして、自分の世界を広げる努力をしてください。

そこが合否の分かれ目です。

毎年5倍を超える競争率なので、合格を勝ち取るのは容易なことではありません。

NoteboolMLを利用した解答例

グーグルが開発したNoteboolMLを使って、解答を試みてみました。

このアプリは想像以上のパワーを秘めています。

今回は問題のPDFをそのまま読み込んでもらい、それに対して600字での論文を要求しました。

ここにそのまま掲載してみます。

内容をあなた自身でチェックしてみてください。

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日本の図書館は、施設数増加の一方で、利用状況が特に図書の貸出実績が停滞・減少する課題を抱えている。

図2が示す国民一人当たりの年間貸出冊数は2010年のピーク(5.3冊)から2020年には4.2冊に減少した。

貸出回数も低水準にとどまっている。

これは物理的基盤強化に反し、利用頻度が不十分な現状を示している。

この課題に対し、地域図書館は「オンライン・デジタルサービスの包括的な拡充とパーソナライゼーションの強化」を戦略とすべきである。

これは、図3の既存事例とは異なる新アプローチを意味する。

物理施設移転、複合化、文化イベント等を積極的に進めなければならないだろう。

具体的な取り組みは次の通りである。

高品質な電子書籍・オーディオブックの拡充、使いやすいオンラインプラットフォームなどの整備も大切である。

さらに必要なのは、AIを活用したパーソナライズ推薦システムの導入である。

オンライン読書会、ウェブセミナー、デジタルアーカイブ等、双方向性の高いイベントの定期開催も必須だ。

多言語対応リソースやオンライン言語学習支援の強化なども当面の目標となる。

これらは利用の利便性を高め、来館困難層の利用を促進するに違いない。

結果として、貸出数だけでなくデジタルコンテンツの利用やオンラインイベントへの参加も増加するはずだ。

図書館は「知識・情報の拠点」として多様な住民ニーズに応える魅力的な存在とならなければならない。

どのような感想を持ちましたか。

同じPDFを読み込ませると、つねに同じ解答がでるのかどうかはよくわかりません。

他のデータなどを読み込ませれば、全く別のアウトプットになるのかもしれないのです。

大変興味のあるところです。

ぜひ、さまざまな方法で試みをしてみてください。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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