意見がない文はダメ
みなさん、こんにちは。
小論文指導歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は小論文の基礎の基礎に戻ります。
今までいろいろと解説を書いてきました。
少しは上手になってくれていれば嬉しいです。
いつもAかBかという選択問題ばかりをやっていると、小論文がすごく難しく感じられます。
どうしてでしょう。
理由は簡単。
自分で問いを作らなければならないからです。
テーマがあったとしましょう。
例えば「コロナ禍の中を人はどう生きればいいのか」とします。
難しい問題です。
そうスラスラとは書けません。
「どう生きれば」というのはいったい何を意味しているのでしょうか。
その内容に肉迫しなくてはいけません。
選択問題なら、あらかじめ答えが用意されています。
これが正解だと思うものを選べばいいのです。
しかし「どう生きればいいのか」とあったら、何を主題にしたらいいのかを自分で考えなくてはなりません。
皆さんなら何を看板にかかげますか。
そのタイトルにしたがって文をまとめていくのです。
その問題を解決するために自分の意見を述べるのです。
そこに受験生1人1人の個性が垣間見えてきます。
これからの成り行きに注目したいなどという結論はあり得ませんよね。
正解はない
小論文に正解はありません。
これが1番苦しいのです。
「よくわからないけれど」などという謝りの文章を最初に掲げて書いたりするのもダメ。
真っ向勝負が必要です。
「どう生きる」の「どう」とは何を言っているのか真剣に分析しましょう。
それしか道はありません。
曖昧な問題であればあるほど、テーマと正対するのです。
ここが正念場です。
おそらく問題を作成した人は「どう」という意味の1つに、より「人間らしく」という意味を加えたのではないでしょうか。
どのようにして人間の尊厳を守りつつ、健康で文化的に過ごしていけばいいのか。
そのためにはどうすればいいのかという方法論だけでなく、心構えを訊いていると考えるのが普通でしょう。
ここまでで問いの1つができました。
他にもあると思われます。
自分の中で何が喫緊のテーマなのか。
それを明らかにしなくてはいけません。
そこに国語の読解力が滲み出ます。
小論文の基本は問題と解決だと言いました。
なんとか自分の意見を絞り出さなくてはいけません。
簡単ではありませんよ。
その覚悟を持って下さい。
自分の意見が書けそうですか。
意見には必ず理由をつけてください。
意見は違ってもいい
答えの書き方は当然人によって違います。
正解はありません。
ただし大切なのは根拠です。
そこに正当性があれば、全く違う答えでもいいのです。
ではどのように書いたらいいでしょうか。
「人間の尊厳」「健康的」「文化的」をメドに文章を組み立てます。
例えば人間の可能性について言及するのはどうでしょうか。
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コロナは人間の多様性を引き出した。
働き方もその1つである。
テレワークや在宅勤務は従来の通勤の風景をかえ、会社依存の生活を全く違うものにした。
人は都市に住むだけが選択肢でないことも知ったのである。
教育の場においてもそれは同様だ。
新型コロナウィルスはオンライン教育の可能性を一挙に広げた。
学校という閉鎖的な空間だけでなく、ネットを利用するより視野の広い探求型の学習を実現した。
このような時こそ、私たちには「自立・自律」が試されているのである。
自分にできることを肯定的に受けとめることで、多様な発想が広がる。
より人間的に自由でいられる時間も増えた。
文化がどれほど人間にとって必要なのかも知った。
生の音楽や演劇に触れることで、豊かな人生を送れるということをあらためて実感したのである。
美術館で絵画を鑑賞する時間がいかに貴重なものであるかも再認識した。
今はアフターコロナが待ち遠しい。
自分の人生をより豊かに育んでくれる文化の豊かさに期待したい。
それこそが「どう生きていくのか」の核心を支える礎になると信じている。
根拠を必ず提示する
これは1つの解答のサンプルです。
必ずこれと同じような視点である必要はありません。
皆さんの考えの数だけ答えがあります。
そこが小論文試験の面白さなのです。
ポイントは根拠の正確さです。
どんな答えでもいいと書きました。
しかしそれを支える理由にきちんと整合性がなければダメです。
ただ書きなぐったままで、正しいから正しいというのでは小論文になりません。
実はここが1番難しいところなのです。
採点者はまさにそこに着目します。
「なぜなら」以下の部分で自分の意見が正当であることをきちんと説明しましょう。
そこがいいかげんだと、力がないということになります。
説明には言葉を尽くすこと。
もっとわかりやすく言えばという基本的な態度が大切です。
別の表現で噛み砕いて説明するのです。
その際に必要なことは、やさしく広く深くということです。
この3つのキーワードを大切にして積み上げていけば、必ずうまくいきます。
どんな人にでもわかる言葉で説明をするのです。
800字程度の小論文なら、すぐに文字で埋まってしまいます。
むしろどう整理したらいいのか悩むくらいです。
言葉が溢れ出てくるときほど、慎重に選んで下さい。
何度も書いていると、表現がつい流れやすくなる場面が出てきます。
要注意です。
冷静に沈着に表現することが大切です。
最後までお読みいただきありがとうございました。